暁 〜小説投稿サイト〜
FAIRYTAIL-ダークブリングの力を操りし者-
第二話 エルザとルシアとスカーレット
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めに何人もの黒魔導士が亡くなったとか。本当ならこの食事も魔導士の人が持ってくるんですけど、みんな恐がって……だから私に持っていくように言われたんです。」

 え、えぇ〜。俺この世界に誕生したのついさっきなんだが……どういうことだ。この身体は一から作り上げたものって言ってたから、そんなことできるわけないんだが。
 ここの連中の記憶でも改ざんしたのか。……うん、そんな感じがしてきた。いきなり俺がこの牢屋に現れても可笑しいだろうし、辻褄あわせに記憶をいじったんだろ。それ以外想像がつかないし、真の答えを得たとしてもそれ程意味はないのかもしれない。

「そうか、あんま記憶にねぇな。というより、エルザが来る前の記憶がないしな」

「え!? 本当ですか!じゃあ、自分の名前もわからないんですか」

 つい辻褄合わせるために、記憶がないってことにしたが……あれ、俺の名前ってなんだ。まったく思い出せない。ちゃんと前世の記憶は残ってる。ただ、名前だけが思い出せない。まるで穴が開いたように消え失せている。


「――俺は、だれだ?」


 言った後に気づいた、自分の声が震えていたことに。親に貰った大事な名前を、友人から家族から呼ばれていた名前を忘れてしまったショックは自身が想像していた以上に衝撃的で辛いものだった。一体いつから忘れていたんだ?一体何故自分の名前を……。
 あらゆる考えが出ては消えを繰り返し、混乱し呆然としていた俺にふわりと緋色の髪が掛かる。そしてこの世界にきて初めて感じた人肌。そこで初めてエルザに抱きしめられていることに気がついた。


「大丈夫。大丈夫だから」


 エルザは優しい声で、まるで子供をあやすかのように呟いた。
優しい子なのだろう。さっきまで恐がっていた相手に臆すことなく抱きしめてあげられるのだから。そして次第に自然と身体の震えは止まっていた。
 突然異世界に行き、罪人のように牢屋に入れられ、鎖で雁字搦めにされ一人孤独な状態に俺は自分でも気づかないうちに心が疲弊していたのだろう。DBによって与えられた安心感は一時的なものだったのかもしれない。これで前世の思い出まで忘れてたらと思うと、ぞっとする。

「ありがとう、エルザ」

「どういたしまして!」

 エルザの浮かべた笑顔は眩いまでに輝いて見えた。

「しかし、エルザみたいな子供に慰められるとはな」

「むぅ、あたなだって私とそんなに変わらないでしょ」

 ……あぁ、自分でもわかっていたさ。ただ自分の眼が可笑しいだけだと思い込みたかったんだが、さすがに他人から言われると事実として受け入れなければならないな。この子供のような小さな身体に。

 いや自分でも、勿論理解はしてたんだ。ただ俺は、いや言い訳だな。見苦しいから止めておこう。
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