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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九十二話 改革へ
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は……、カール・ブラッケでございます」
「オ、オイゲン・リヒターでございます」
しどろもどろの我らの挨拶に女帝陛下は軽く笑みを浮かべて頷いた。やはり育ちが違うな、自然と頭が下がってしまう。

「本来ならリッテンハイム侯も此処に来るはずだったのだがな……」
公が幾分表情を曇らせた。どうやらリッテンハイム侯は改革に反対らしい、だとすると改革の実現は難しいのかもしれない。ブラッケに視線を向けると彼も同じ思いなのだろう、眉間にしわを寄せている。

「地球教の件で手が離せんのだ、済まんな」
「はあ」
拍子抜けした。ブラッケも顔から力が抜けている。地球教か……、確かにリッテンハイム侯は内務尚書だ、担当者ではあるが……。

「そのように厄介な相手なのでしょうか? 既にオーディンでは支部も壊滅しあとは地球制圧だけと伺っておりますが」
私の問いかけに公が顔を顰めた。女帝陛下も憂欝そうな表情をしている。どうやら私の考えは浅はからしい。

「日に日に厄介さ、おぞましさが増してくる。なんとも薄気味悪い連中だ。あの連中、何をしていたと思う」
「……何をと言われましても」
「地球教の信者にサイオキシン麻薬を与えていた」
「サイオキシン麻薬?」
私の言葉にブラウンシュバイク公が頷く。ブラッケに視線を向けた、ブラッケは呆然としている。

「しかし、何のために? そのような事をすれば信者を徒にサイオキシン麻薬の中毒患者にしてしまいますが……」
気を取り直して問いかけたブラッケの言葉に公が頷き笑みを浮かべた。何処か怖い様な笑みだ。
「ヘル・ブラッケの言う通りだ。信者はサイオキシン麻薬の中毒患者になってしまう。そのうえで洗脳する……」

ブラウンシュバイク公が何を言ったのかよく分からなかった。ブラッケと顔を見合わせたが彼も困惑したような表情をしている。止むを得ず公と女帝陛下の顔を交互に見ながら問いかけた。
「洗脳、ですか?」

「そうだ、洗脳だ。最近の宗教は人を救う事よりも人を奴隷、いやロボットにする事を選ぶらしい。ロボットは文句を言わんからな。善悪の判断もない、命じられたことを実行するだけだ。まあ悩みが無くなって良いのかもしれん、救いと言えば救いだな。どうだ、便利だろう」
ブラウンシュバイク公が笑っているが私には笑うことは出来ない、ブラッケも顔を強張らせている。

「貴方、笑うのはお止めになって。お二人が困っていらっしゃるわ。第一不謹慎です」
公を窘める女帝陛下の言葉によく分からないうちに頭を下げていた。
「そうだな、笑いごとではないな……」
ブラウンシュバイク公が笑うのを止めた。そして深い溜息を吐く。

「連中、反乱軍、いや自由惑星同盟でも同じ事をしていた。自由惑星同盟でも皆連中のおぞましさに震え上がっている。最近ではわし
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