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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜絶望と悲哀の小夜曲〜
圏内事件〜殺人者〜
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ちゃゲームにならないっすよヘッドぉ!」

緊張感のない、しかしおぞましいやり取りに、ザザがエストックを掲げたままヒャッヒャッと笑った。

ここにきて、ようやく現実的な恐怖と絶望が背筋を這い登ってきて、シュミットは思わず目を瞑った。

生き残るためにひたすら強化したステータスも装備も、この連中の前には無意味だ。

こいつらはもうすぐ食前酒めいた戯言を打ち切り、それぞれの武器を振りかざすだろう。ことにPoHの持つ大型ダガー《友切包丁(メイトチョッパー)》は、現時点での最高レベルの鍛冶職人が作成できる最高級の武器を上回る性能を持つモンスタードロップ、いわゆる《魔剣》だ。

シュミットが着込む分厚いプレートアーマーの防御をも容易く抜いてくるはずだ。

──グリセルダ。グリムロック。

これがあんた達の復讐だというなら、オレがここで死ぬのは仕方ないのかもしれない。しかしなぜヨルコやカインズを巻き添えにするんだ。あんた達を殺した真犯人を暴くために、とてつもない労力をつぎ込んできた彼らまで。なぜ──

シュミットが、絶望に彩られた思考を泡のように弾けさせた、その時。

「う〜ん。さすがにそれは困るかな」

何の気負いもなく、緊張感の欠片もない、むしろのんびりとした空気を纏った言葉がいきなり、驚くほどの至近距離から聞こえてきた、子供の声。

気付けなかった。

その小さな影は、樹の影に隠れていた訳でも背後から忍び寄ってきた訳でもない。

恐らく、この広いアインクラッドの中でも十の指に入るほどの殺人者の前に平然と、一人で、夜の闇を思い出させる瞳がある顔を同色のマフラーに埋めさせ。

立っていた。

暗がりで見えなかったとか、気がつかなかったとか、そんな次元ではない。確かに一瞬前まで誰もいなかった。だが、たった一度瞬きした瞬間、そこに少年は立っていたのだ。

同時にシュミットの体が地面に貼り付けられたかのように動かなくなった。

動きが鈍ったとかの話ではない。たとえ麻痺していても、腕くらいは動かせる。

ここにきて、ようやくシュミットは悟った。昼間見たとき、普通の子供だな、とシュミットは思った、思ってしまった。

ちがうのだ。

そんなことを思うことがおかしいのだ。

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