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髪の毛の薄い天使
第二章
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 だから店長もそのことは知らなかった。だがこう彼に言ったのである。
「けれど。誰も信じられない感じの子はね」
「僕みたいな感じですか」
「そんな感じなんだよ、皆」
「そうなんですか」
「けれどね」
 だがそれでもだとだ。ここで店長は彼に言った。
「そのことはね」
「そのことは?」
「信じられる様になるから。信じられれば」
 人をだ。そうすることが出来ればというのだ。
「凄くいいから」
「そうでしょうか」
「信じられない人はいるけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「信じられる人もいるんですよ」
「信じられる人も」
「人はそれぞれだよ」
 店長は微笑んで彼に話す。
「多分。君もそのワレンバーグって人はね」
「信じられますか?」
「そういう人だから」
「そうでしょうか」
「まずは読んでみたらいいよ」
 ワレンバーグの本、それをだというのだ。
「それからだよ」
「まずは読んでからですか」
「そう、それからだよ」
「本は読んでからですね」
「読んでから面白いかどうか、いい本かどうかわかるからね」
「そうですね。読んでからですね」
「じゃあいいね」
 店長は微笑んだまま彼にその本を差し出してきた。それは少し分厚く白人の髪の毛の薄い人物の写真が表紙になっている本だった。 
 表紙のその人物を見てだ。彼は店長に尋ねた。
「この人がですね」
「そうだよ。ワレンバーグさんだよ」
「ううん。何か」
「外見は冴えないね」
「何か」
 髪の毛は薄く顔立ちも普通だ。取り立てて美男子という訳ではない。むしろ冴えないと言っていい外見だった。
 その写真を見てだ。彼は言ったのだった。
「普通ですよね」
「不細工ではないにしてもね」
「普通ですよね、本当に」
「うん。けれどね」
 だがそれでもだというのだ。
「この人は信じられる人だから」
「それは読めばわかるんですね」
「うん、そうだよ」
 まさにだ。そうすればだというのだ。
「だから読んでね」
「はい、じゃあ」
「百円だから」   
 店長は本の値段を言ってきた。
「安いだろ」
「百円ですか」
「そうだよ。百円だよ」
 店長は今度は微笑んで言う。
「買うかな」
「はい、お金はあります」
 百円はだ。丁度持ち合わせがあった。
「それじゃあ」
「うん、毎度あり」
「この本を読めばですか」
「その人のことがわかるからね」
 ワレンバーグ、その人のことをだと。
「よく読んでみてね」
「そうさせてもらいます」
 こうした話をしてだ。それからだった。
 彼は家に帰ってすぐに自分の部屋に入った。そうしてそのワレンバーグの伝記を読みはじめた。
 ワレンバーグは暖かい家庭に育ちそれから外交官になった。だがその頃の欧州
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