第七話 義の戦その十
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「毒のない」
「何っ、毒のない河豚もいるのか」
「そうだったの」
「はい、最初はトラフグだと思ったんですけれど」
それがだ。実はだというのだ。
「サバフグでした。毒のない」
「この河豚は安心して食べられますから」
明日夢もここで慶彦達に話す。
「美味しいですし」
「ううむ、では宗朗の責任のことは」
「これでは」
「ないのう」
幸村がすかさず打ち消してきた。
「全く。河豚位ちゃんとわかっておれ」
「いやいや、河豚はやっぱり毒があるものだからな」
響鬼はその幸村に笑って話す。
「ある脚本家の人なんかは河豚を食おうと思って皆に止められたこともあるからな」
「毒があると皆思うておるからか」
「そうだよ。だからそれは仕方ないさ」
「しかし責任のことはどうなる」
幸村は不安げに宗朗と千姫を交互にせわしく見ながら響鬼に問うた。
「全く恐ろしいことを言いおる」
「まあ毒はないからね」
「責任は起こらんな」
「そうなるかな、この場合は」
「ではじゃ。この話はなしじゃ」
幸村は強引にそういうことにしてしまった。
「よかったのう宗朗、御主は助かったぞ」
「助かったっていうか僕は何も言っていないけれど」
周りの騒ぎにきょとんとしていただけだった。
「何ていうか」
「全く。あと一歩だったのに」
むしろだ。千姫が忌々しげに歯噛みしている。
「余計なことを」
「危ういところだったわ。油断も隙もないわ」
「けれどまたの機会に」
これで諦める千姫ではなかった。それでだ。
まだ宗朗を見てだ。今度はこんなことを言うのだった。
「私はそれこそ宗朗をいつも」
「どうしていたのじゃ」
「馬にしていたのよ」
幼子の頃のことを言うのだった。
「私が人になって宗朗をいつも操っていたのよ」
「完全にかかあ天下ではないか」
「悪くて?私はそもそも」
「わかっておるわ。庭球でも部長だったな」
「知ってるのね、そのこと」
「ふん、知らぬと思うかこの幸村が」
話がここでもよくわからない方に飛んできていた。
「西洋の軽音楽もやっておるし魔乳がどうとかもじゃな」
「あっ、それわたくしもですわ」
兼続もここで言う。
「これでも最初は胸が大きくてたゆんたゆんでしたわ」
「何か話が凄くなってませんか?」
威吹鬼は鍋の中の野菜と豆腐を取りながら言った。
「まあ何はともあれ今はサバフグを食べてですね」
「はい、英気を養いましょう」
又兵衛が彼のその言葉に頷く。
「それでは」
「河豚も野菜もまだまだありますから」
轟鬼はこんなことを言いながら実際に鍋に野菜や豆腐を入れていく。無論河豚もだ。
「それで最後はですね」
「雑炊だな」
「最後の最後はそれね」
斬鬼と朱鬼が応える。
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