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とある銀河の物語
003 教授と博士とマティルダ
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「十二時まで、あとどのくらいかな?」
ふらつく足取り、眠そうな声でマティルダか父親に聞いた。
ナップに助けられてから、時おり休憩を入れたがほとんど歩き詰めだ。疲れてもいるだろう。
泣き言も言わず、ひたすら歩くことに専念している。
この芯の強さは母親譲りだな。父親として十年、マティルダに何をしてやれただろう?
父親らしいことを、してやれたのだろうか?
いや、大した事はしていないな、と自嘲せざるを得ない。
家を空けることの多かった母親と、娘の扱いを知らない父親未満の男のところで、よくこんなに良く育ったものだ。
ま、子供は足りない親を反面教師にして育つということか・・・。
「あと二時間はあるな・・・ほれ。」
娘の前にしゃがみ、背中を出す。
「・・・なんかのテレビドラマみたい。」
「そうだな、たまにはテレビドラマみたいに格好つけさせろよ。」
「「背負われるほうは、格好悪いのよ。」
それでも、父親の背中に体重を預けた。気持ちよさそうな、大きなため息。
ズシン、ときた
「お・・け、けっこうあるな・・・」
「何か言った?」
「い、いや、なにも・・・」
「ドラマみたいに格好よくいくんでしょ?」
「あ、当た前だ。とにもかくにもあそこから出られたんだ。救出の可能性だって、ある。」
あの男、ナップはなかなか面白いやつだった。
鼻っ柱が強くって、エネルギーが有り余っていて、何かといじってやりたくなるタイプだ。
若いうちは前線に出して、いろいろと遠回りさせてみたら、面白い男になるかもしれない。
こんなところで、俺たちのために死なせるのは、惜しいな。
いや、マティルダのためになら死んでほしいが、俺のためにというほどではない。
でも年上が好みとか言ってたなぁ。俺とは気が合うかもしれない。
・・・・アメリア、無事でいるか・・・
「そう、ね・・・ナップさん、大丈夫、かしら・・・」
お前の願いと俺の願い、その真ん中にいるマティルダ。絶対に守る。
だが、俺はお前も守りたいんだ・・・。

十年前。
ニコラ・テスラ・アカデミー卒業の俊英名高いアメリア・ジョースター。三十四歳。MBT応用エンジニアリングの先駆者の一人だ。
本人が出版した著書は一切ないが、彼女のことを書いた本はそれこそ五万とある。それほど彼女が世の中に与えた影響は巨大なのだ。
この五万とある書籍の一ページ目には、必ず彼女のメッセージが挿入されている。
“私、アメリア・ジョースターはこの本に関しての権利を一切放棄しています。ですからこの本に書かれている内容に関して、一切の責任を持ちませんし、質問も受け付けません。インタビュー、メールなどにも一切返答いたしません。私に一切の迷惑をかけない範囲で、この本をお楽しみください。”
・・・賛否両論だったが、結局実績を出し続けた
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