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金木犀の許嫁
第十二話 驕る平家は久しからずその九

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「トラウマになるよ」
「心に傷を負いますか」
「完全な虐待だから」
 ここまでの暴力はというのだ。
「だからね」
「それで、ですね」
「トラウマも持つことになるから」
「すぐに逃げることですか」
「こう言ったら何だけれど所詮学校の部活だよ」
 こうもだ、部長は言った。
「会社でもこんなところからは転職すべきだし」
「暴力が横行していたら」
「うん、普通の会社じゃないから」
「もっといい場所がありますか」
「ここしかないとかここ以外でやっていけないとかね」
 そうしたというのだ。
「考えはね」
「持たないことですね」
「そうだよ、親父に言われたけれど世の中は広いんだよ」
 こうもだ、部長は佐京に話した。
「だからね」
「そうした人がいる場所は」
「部活でも会社でもね」
「すぐに逃げるべきですか」
「どうせまともな教育は行わないし」
 そうした部活になっているというのだ。
「企業としての経営もね」
「酷いですか」
「まともでない人はまともな経営を出来るか」 
 佐京に問う様にして言った。
「わかるよね」
「はい」 
 佐京も確かな声で答えた。
「そう言われますと」
「だからね」
「逃げることですね」
「一刻も早くね」
「すぐに辞めることですか」
「自分に危害が及ぶ前にだよ、及んでも」
「その時点で逃げることですね」
 佐京もそれはと応えた。
「そうですね」
「さもないとね」
 そうでなければというのだ。
「本当にだよ」
「自分が迷惑を受けますね」
「そうなるから」
 それ故にというのだ。
「逃げる」
「即刻」
「忍述は逃げることも術のうちだけれど逃げるにも勇気がいるんだよ」
「危険な場所から逃げることは」
「こんなどうしようもない先生改善する筈もないし」
 その指導がというのだ。
「そこで頑張れとか言われても」
「頑張ってもいいことはないですね」
「殴られて蹴られて罵られて」 
 そうした暴力を受けてというのだ。
「もっとね」
「暴力を受けますね」
「そうなるに決まってるから変な人が何言っても」
「親でも」
「親でも変なこと言う時あるよ」
 そうしたものだというのだ。
「本当にね」
「そうですか」
「親だから常に正しいとは限らないしいい人ともね」
「限らないですか」
「毒親って言葉あるし」
 部長はこの言葉も出した。
「世の中まとも出ない人がいたら」
「的も出ない人が結婚してですね」
「まともでない親になるよ」
「そうなるからですね」
「巨人の星だってそうじゃない」
「あの漫画ですね」
「星一徹なんかまさに毒親だよね」
 こう言うのだった。
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