第一章
[2]次話
ラーメン屋の親父の前職
博多のラーメン屋吉四六は豚骨ラーメンが有名である、この地域の名物の白いスープと細い麺のそれが絶品なのだ。
それは店の親父である山岸峰雄の腕による、大柄で逞しい身体に黒く短い髪の毛そして細く鋭い目に岩の様な顔である。
その彼の店には常連も多いがそのうちの一人にだ。
若いサラリーマンの柳田潤もいる、面長で少し癖のある茶色がかった黒髪で明るい感じの目と唇を持っている。背は一七三位で痩せている。
彼はこの日も昼に店のラーメンを食べてその美味さに満足した、だがその後会社に帰って一緒に食べた同期の斎藤重留長身で黒髪を左に分けた穏やかな顔立ちでややがっしりとした体格の彼に対して言った。
「今日も美味かったな」
「ああ、吉四六のラーメンはな」
「親父さんのラーメン最高だよ」
明るい笑顔で言うのだった。
「本当にな、ただな」
「ただ？どうしたんだ」
「いや、親父さん何処であんなラーメン身に着けたんだ」
「あんまり美味いからか」
「今ふと思ったけれどな」
「何処で修行してか」
「ああ、やっぱり凄い店でな」
そこでというのだ。
「修行してな」
「あれだけの腕を見に着けたのか」
「そうか？」
「そうかもな」
斎藤は柳田の言葉に頷いた、だが。
親父、力道正弘についてある噂が出た、柳田はその噂を聞いてまずはまさかと思って話をした斎藤に言った。
「いや、まさかな」
「親父さんが元ヤクザとかか」
「そういうのないだろ」
「けれど福岡多いだろ」
斎藤はこう柳田に返した。
「最近減ったにしてもな」
「ヤクザ屋さん多いか」
「そうだろ」
「それはな」
「だからな」
それでというのだ。
「そんな噂も出ているんだよ」
「噂は何でもありだな」
「ああ、けれどな」
「けれど？どうしたんだ？」
「事実は一つだろ」
こうもだ、斎藤は柳田に話した。
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