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カブトムシと粘土
第三章

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「水の中に入りだ」
「土をですか」
「持って来るのだ、粘土をな」
「そちらをですね」
「ぞうだ、いいな」
「それでは」
 カブトムシは頷いてだった。
 水の中に飛び込んですぐに粘土を持って帰って来た、その粘土を以てだった。
 タタラは大地を築いた、だが。
「湿っていてです」
「このままではな」
「歩くことすら出来ません」
「そうだな」
 タタラはノストゥの言葉に頷いた。
「これではな」
「左様ですね」
「だからだ」
「今度はどうされますか」
「あの暗闇が嫌になっていた」
 上を見上げて話した。
「丁度な」
「では」
「そうだ、今度は光を出そう」
「それをですか」
「太陽と月、それに星を出し」
 そうしてというのだ。
「昼も夜も世を照らしだ」
「暗闇をなくし」
「そして大地も照らしだ」  
「光によって熱を与えてですね」
「乾かす、そこに風も出してな」
 そうもしてというのだ。
「尚更な」
「乾かすのですね」
「そうする、こうしてな」
「大地を確かなものにしますね」
「そしてそこに多くの生きものを住ませ」
 大地の上にというのだ。
「水も大地もな」
「共に命溢れる場所にしますか」
「そうしよう、そして我々でだ」
 ノストゥを見て彼女に話した。
「その命を生みだしていこう」
「夫婦であるので」
「それでいいな」
「畏まりました」
 妻となった精霊は頷いて応えた、そうしてだった。
 大地の上にも多くの命人間も含めて満ちる様になった。これがガロ族に伝わる世界が生まれた話である。一人でも多くの方が読んで頂くなら幸いである。


カブトムシと粘土   完


                    2023・10・12
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