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母を許した日
第五章

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「私佳織よ」
『佳織ちゃんね』
「はじめまして」
 祖母に微笑んで挨拶をした。
「これから宜しくね」
『こちらこそね』
 続いて友樹も挨拶をした、そしてだった。
 親子三代で筆談も交えて話をした、その最後に。
 久美子は冴子にだ、彼女の顔を見て言った。
「また会えないかしら」
『会っていいの?』
「ええ」
 問うてきた母に答えた。
「娘だから」
『そう言ってくれるのね』
「あの、縁切るって言ったけれど」
 それでもとだ、久美子はさらに言った。
「これからはね」
『また親子ね』
「そうならない?昔このことは忘れて」
「そうしよう」 
 親戚の人もここで言ってきた。
「冴子さんも反省してるね、だったら」
『反省しているけれど』
「人は間違えるものなんだ」 
 親戚の人は冴子に言った。
「それは戻らない、けれどね」
「もう昔のことだし」
 また久美子が言ってきた。
「それにやっぱり親子だしね」
「だからな」
 親戚の人がまた言ってきた。
「また会おう」
「そうしましょう」
「・・・・・・・・・」
 冴子は二人の言葉にだ。
 無言でこくりと頷いた、そしてだった。
『有り難う』
「そう言ってくれるのね」
『ええ』
 筆談でそうだと答えた。
『それじゃあまた』
「会いましょう」
『あらためて。そして』
 冴子はさらに書いた、その文章は。
『テストのこと。御免なさい』
「もういいわ」
 久美子は微笑んで応えた、その笑顔と言葉にだ。
 冴子は俯いて泣いた、目を閉じて歯を食いしばって泣いた、それを見て久美子は微笑んだまま泣いた、この時からだった。
 久美子は母そして彼女の親戚とも会う様になり一家を連れて訪問することもあった。そして母と筆談を交えて話していった。喋られない母とそうして心を交えさせていった。


母を許した日   完


                    2024・2・27
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