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それ位の額なら楽勝
第二章

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 二人で昼食を食べた後で会社に戻った、すると福岡出身の先輩社員和久井安海黒髪をショートにしていて穏やかそうな大きな垂れ目で微笑んだ口元で丸顔で一五七位の背で胸の大きい彼女がこんなことを言っていた。
「バウアーさん獲得はね」
「ソフトバンクですね」
「どうやらオリックスも手を引くしね」 
「あそこお金ありますけれど」
「どうやらね、メジャーに復帰出来ないなら」
 それならというのだ。
「もうね」
「ソフトバンクはですね」
「獲得に動いて欲しいわ」
「戦力になりますので、ただ」
 小百合は安海に言った。
「年俸ですね」
「出せるわ、うちは」
 一言でだ、安海は小百合に答えた。
「三十億位はね」
「出せますね」
「そうよ、だからね」
「バウアー選手はですか」
「うちに来て欲しいわ、今もね」
「期待されていますね」
「そうよ、三十億位と言えるから」
 そうしたチームだからだというのだ。
「本当にね」
「来て欲しいですね」
「ええ、楽勝でね」
 そう言っていいだけにというのだ。
「うちはお金あるから」
「三十億が楽勝ですか」
「親会社が親会社だしね、赤字の額もね」
 これもというのだ。
「格が違うし」
「それから見たらですね」
「三十億位よ」
「そう言えますね」
「本当にね」
 こうした話をしてだった。
 安海は自分の席に向かった、小百合はその彼女を見ながら今は隣にいる同期に対して言ったのだった。
「三十億位楽勝ってね」
「そう言えるのは強いわね」
「お金だけじゃないって言うけれど」
「お金が大事な時もあるからね」
「やっぱりバウアーさんソフトバンクかしらね」
「少なくとも先輩はそうよね」
「ええ、けれどね」
 期待していない、そうした目で小百合は言った。
「出来たらね」
「バウアーさん横浜に残って欲しいのね」
「心から願っているわ」
 こう言うのだった、そのうえで自分の席に着いた。そうして午後の仕事に励んだのだった。その間は野球から離れていた。


それ位の額なら楽勝   完


                  2024・2・22
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