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満点以外認めなかったら
第一章

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                満点以外認めなかったら
 厳しい母であった、中林冴子は娘の久美子がテストで満点以外だとすぐにきつく叱って次に満点を取るまで口を利かなかった。
 久美子は最初はそんな母に応えようとしていたが。
 高校に入るとだ、達観した様に言う様になっていた。茶色がかったロングヘアに細めの切れ長の贈二重の目で眉は細い。赤い唇は広くやや面長の顔で少し色黒だ。背は一六四位ですらりとしている。実は母親そっくりである。
「満点じゃなくてもいいわ」
「あんた成績いいしね」
「このままだと国立に行けるしね」
「そうよ、うち片親だし国立行けたらね」 
 大学はというのだ。
「私のバイト代で何とかなるし」
「大学入ったら家出るの」
「それで自分で学費稼ぐの」
「もう一緒にいたくないのよ」 
 クラスメイト達に素っ気なく言った。
「お母さんとね」
「満点以外だと口きかないし」
「やたら怒るから」
「もう嫌になってるのよ」
 母親と一緒に暮らすことがというのだ。
「だからね」
「大学生になったら家出て」
「完全に自立して」
「縁も切るのね」
「そうするのね」
「そうするわ、いい思い出ないしね」
 母との間にはというのだ。
「だからそうするわ」
「満点じゃなかったら駄目とかね」
「確かに厳し過ぎよね」
「久美子ちゃん成績いいのに」
「学年で普通にトップクラスなのに」
「満点じゃないと駄目とか」
「極端よね」
「ただ」 
 ここでクラスメイトの一人がこんなことを言った。
「親は親だけれどね」
「どういうこと?」
「だから自分を生んで育ててくれたから」
 それでというのだ。
「そのことは忘れたらいけないんじゃないかしら」
「碌に育ててもらってないから」
 これが久美子の返事だった。
「ご飯や家事はしてくれても」
「それでもなの」
「本当に満点じゃなかったらね」
「次満点取るまで口きかなくて」
「やたら怒るから。中間や期末なんて全教科満点じゃないと」
 そうでなければというのだ。
「怒るしね」
「口きかないから」
「もう親ともよ」 
 その様にされてきたからだというのだ。
「思っていないし」
「大学に入ったら」
「縁切るから」
 こう言ってだった。
 久美子は実際に県内の国立大学に入学が決定するとすぐにアルバイト先も探して決めてそうしてだった。
 家を出た、もう家には寄り付かないと決めてだった。
 実際にそうした、それで大学の四年間を過ごし県庁に就職してもだった。
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