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金木犀の許嫁
第三話 お見合いその一

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                第三話  お見合い
 その日が来た。
 夜空は桃色の振袖と赤い帯を着させられた、生地は絹で彼女はそのことに驚きを隠せないでいて母に言った。
「ちょっとね」
「業火だっていうのね」
「振袖なんて」
「お見合いは着飾るものよ」
 着付けをした母はこう答えた。
「だからね」
「振袖なの」
「まさか制服で行くと思ってたの?」
「ええ」 
 その通りだとだ、夜空は答えた。
「そうね」
「学生の間は何でも制服だからね」
「もう冠婚葬祭全部でしょ」
「制服でいけるわ」
「そうよね」
「だから便利なのよ」
 制服はというのだ。
「とてもね」
「そうよね、だからね」
「お見合いはまた別だから」
「こうした服じゃないと駄目なの」
「駄目って訳じゃないけれど」
 それでもというのだ。
「やっぱりここはしっかりとね」
「いい服じゃないと駄目なのね」
「それで振袖なのよ」
 今着せた服だというのだ。
「もう成功して同居して」
「将来は結婚するって」
「決まってるから」
 だからだというのだ。
「もう人生の晴れ舞台の一つだから」
「振袖なのね」
「そうよ、成人式や卒業式でも着ると思うけれど」
「今日もなのね」
「そうよ、これでわかったわね」
「そこまで言われたらね」
 それならとだ、夜空も頷いた。
「私もね」
「それならいいわ」
「夜空はわかったけれど」
 ここで真昼も言ってきた。
「私もなのね」
「そうよ」
 母は彼女にも答えた、見れば水色の生地で青い帯である。言うまでもなくその生地は絹であり姉妹お揃いであった。
「あんたはお見合いしないけれど」
「一緒に行くから」
「それでよ」
「振袖なのね」
「あんたも近いうちによ」
「お見合いするの」
「夜空の方が先になったけれどね」
 それでもというのだ。
「そうなると思うから」
「その時になのね」
「そう、二人共ね」
「また振袖になるのね」
「嫌?」
 母はここで娘達に尋ねた。
「振袖は」
「そう言われたら」
「嬉しいわ」
 姉妹で母に答えた。
「振袖なんてね」
「物凄く奇麗な服だから」
「そんな服着られるだけでね」
「嬉しくない筈がないわ」
「そうでしょ」
 娘達のその言葉に笑顔で応えた。
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