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第五十三話 幸福その十三

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「楽しもう」
「楽しむ、それはいいことですね」
「そうであるな」
「わらわはこれまで楽しみを知りませんでした」 
 丁は自分のこのことも話した。
「夢見の責と運命を見ての絶望と」
「孤独だけを感じてな」
「知りませんでした」
 楽しみ、それをというのだ。
「そして貴女が生まれました」
「そうであるな」
「しかしこれからは」
「楽しむか」
「そして笑っていきたいです」
 静かなかつ澄んだ声での言葉だった。
「天の龍達、庚、周りにいる者達それに」
「地の龍とじゃな」
「貴女と共にいて」
「そしてあの娘ともじゃな」
「小鳥とも。わらわは孤独でなく」
 そしてというのだ。
「夢見の責も皆が支えてくれて」
「運命は色々と変わるのう」
「希望は常にあります。全てわかったので」
 それ故にというのだ。
「わらわはです」
「これからはじゃな」
「笑っていきたいですし」
「笑えるのう」
「そうなります」
「そうじゃな。ではな」
 もう一人の丁はそれならと応えた。
「わらわもな」
「見ていき楽しんでいきますね」
「そなたと共にな。ではな」
「はい、これからは」
「見守っていく」
 自分自身をとだ、今の彼女には邪なものも激しいものもなかった。自分自身の様に清らかに澄んでいて落ち着いていた。
 北都は全てを見てだ、神威の夢に出て来て彼に言ってきた。
「はじめましてかな」
「前に会ったか」
「どうだったかな。まあどっちにしてもね」
「今俺の夢に来たということは」
「お話したいことがあってだから」
 それでというのだ。
「お話していいかな」
「ああ」
 神威は夢の中の暗闇の虚無の中に右膝を立ててそこに右手を乗せて座っている、そのうえで自分と向かい合って立っている北都に答えた。
「俺もじっくりとだ」
「私と話したかったわね」
「昴流さんのお姉さんだったな」
「双子のね」
「あんたは殺されていたな」
「星ちゃんにね」
「しかしずっとだな」
「この世に残っていたの」
「そして牙暁と話していたか」
「彼とはお友達だからね」
「いつも絶望しているあいつにだな」
「お話してね」
 そうしてというのだ。
「励ましていたの」
「そうだったな」
「運命は決まってないってね」
「幾らでも変わるものだとだな」
「何も決まってないってね」
「そしてその通りだったな」
「星ちゃんはああなりたくてね」
 彼のことは目線を下にやって残念そうに話した。
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