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球速が出なくなっても
第一章

[2]次話
                球速が出なくなっても
 ストッパーとして活躍してきた近藤隆司は最近成績が落ちてきていてストッパーとしてはどうかと言われていた。
「実際球速も球威もな」
「落ちてきてるって言われてるわね」
「そうなんだよな」
 自宅で妻の由美面長の顔で八重歯とあどけない感じの目が印象的な彼女に話した、長い黒髪を後ろで束ねていて一六〇位の背ですらりとしている。
「俺はストレートが武器なのにな」
「速球がね」
「その速球がな」
 武器にしているそれがとだ、細く鋭い目で長方形の顔で一文字の大きな口と高い鼻がある顔で言った。黒髪は短くしていて一八〇の背で筋肉質である。
「歳でな」
「落ちてきていて」
「成績が落ちていることも」
「当然なのね」
「ああ、どうしたものか」
 こう言うのだった。
「変化球投げてもな」
「あなた変化球は」
「スラーブとシュートとな」
 まずは二つの球種を出した。
「フォークだけだ」
「三つね」
「その三つ以外は駄目だしな」
「投げてもものにならないのね」
「それでその三つの球種もな
「あまり、よね」
「ああ、俺は変化球は駄目なんだ」
 変化球投手の素養がないというのだ。
「ストレートしかないからな」
「それでなのね」
「どうしたものか」
「あの、お父さん引退するの?」
「そうなの?」
 小学三年生の息子の辰雄と一年生の娘の里佳子が心配そうに言ってきた、息子は父親似で娘は母親似だ。
「もっと続けて欲しいけれど」
「マウンドのお父さん観たいから」
「お父さんも投げたい、だから考えてるんだ」
 息子達にこう返した。
「どうしたものかってな」
「そうなんだね」
「お父さん頑張るのね」
「ああ、どうしたものか」
 ストレートが落ちてきてしかも変化球投手の素養がなくてだ、彼は今悩んでいた。その中で試合に出てトレーニングをしていたが。
 ある日だ、試合前の練習中にコーチに言われた。
「隅ついていかないか」
「隅ですか」
「コースのな」
 こう言うのだった。
「お前ずっと球速と球威に任せて投げていただろ」
「はい」 
 近藤はその通りだと答えた。
「ずっと」
「それをな」
「コースを考えるんですね」
「ストライクゾーンのな」
 そこのというのだ。
「隅にな、お前コントロールいいからな」
「だからですね」
「隅だよ、あと相手バッターをよく見てな」
 そうもしてというのだ。
「相手の癖とか特徴とかな」
「それで裏をかいたりして」
「そうしていったらどうだ」
「そうですか」
「そうしたらストレートでもな」 
 これまで投げていた球種でもというのだ。
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