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生贄がなった木
第二章
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「樹液が滴るが」
「赤いです」
「まるで血の様に赤いです」
「その樹液は」
「これはだ」
 まさにというのだ。
「人の血だな」
「そうですね、それではです」
「この木達は生贄ですね」
「生贄に捧げられた者達ですね」
「彼等が変わったものですね」
「間違いない、生贄に捧げられてだ」
 そうしてというのだ。
「そのことを喜んでだ」
「木となってですね」
「そしてですね」
「今はこうして生きていますね」
「左様ですね」
「その喜んでいる気持ちを讃えよう」
 王子は素直な顔で述べた。
「我等はな」
「はい、そうしましょう」
「生贄に捧げられたことを喜んでいるのですか」
「その気持ちを讃えましょう」
「是非共」
「だからこの木を大事にしよう」
 王子はこう言ってその木達を大事にする様に命じた、そしてこの国では以後この木を大事にする様にしたが。
 後にこの国に来たキリスト教の宣教師達はこの木を見てかつて王子が行い言ったことを聞いて激怒して言った。
「生贄なぞ言語道断だ」
「恐ろしい非道だ」
「この地ではそれが平然と行われていたことは知っているが」
「ここでもか」
「そんなことは許してはならない」
「絶対にだ」
 まずは口々にこう言った。
「既にこの地の生贄は禁じた」
「キリスト教に改宗もさせた」
「こんなことは二度と繰り返してはならない」
「この木になった奴隷達が喜んでいるか」
「そんな筈がない」
「苦しんで死んだのだぞ」
「生贄に捧げられて喜ぶ者がいるか」
 彼等の考えで言うのだった。
「一人もな」
「まして奴隷ではないか」
「奴隷が考えを言えるか」
「そんな筈がない」
「奴隷といえど生贄になぞ捧げるなど悪の極みだ」
「まさに悪魔の所業だ」
「それで死んだ者が喜ぶ筈がない」
 絶対にというのだ。
「何があってもな」
「喜んで死んだものか」
「苦しんで死んだ筈が」
「この木は恨みの木だ」
「喜んでいる木ではない」
 断じてというのだ。
「そんな筈がない」
「生贄に捧げられた苦しみと痛みに満ちた恨みの木だ」
「その樹液がその証だ」
「このことを忘れるな」
「生贄なぞ二度と行わせてはならない」
「この木達に誓ってな」
 こう口々に言うのだった、そして彼等は実際にこの話を広く伝えこの地での生贄を捧げさせることを徹底的に否定し行わせなかった。
 これがログウッドに伝わる話であるが。
 異説もある、この王子は私利私欲のみの人物で黄金や宝玉を商人達の積み荷を襲って手に入れてだ。
 その後で奴隷に財宝を収める穴を掘らせて財宝をそこに埋めて奴隷を殺してその穴に財宝ごと埋めることを繰り返し。
 やがて奴隷の一人に返り討ちにされ自分が埋められて自身も木になっ
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