暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第181話:優しい壁
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 颯人からの突然の問いに対し、宮司は即座に答える事をしなかった。ただ静かに、彼の目を真っ直ぐ見つめ返すのみ。あまりにも真っ直ぐに見つめ返されるので、流石の颯人も彼が何を考えているのか一瞬分からなくなるほどだった。

 だが時間にして数秒にも満たない時間、颯人の目を見つめていた宮司は直ぐに日中の朗らかな笑みを浮かべ口を開いた。

「はて……何の事でしょうな? あぁ、もしや昼間のあれを真に受けられてしまいましたか? でしたら申し訳ない。先程も申した通り、あれは単なるジョークでして――」

 飽く迄しらを切ろうとする宮司であったが、颯人はそれを軽く上げた手を小さく振る事で制した。目を瞑り、舌をチッチと鳴らして手を振る彼に宮司も思わず口を噤む。

「いやいや……宮司さん? 俺、こう見えて手品師でしてね。明星 颯人ってんですけど、聞いた事あります?」
「確か、最近有名になり出した若手マジシャン……でしたかな? すいません、あまり流行の類には明るくないものでして」
「そこだけ知ってくれてればこっちとしては結構。ま、何が言いたいかと言うと……手品師ってのは大なり小なり、人を見る目ってのが肥えてる連中が多いって話です」

 俗にいうメンタリストと呼ばれるパフォーマーは、読心術やテレパシーと言ったメンタルマジックを行うマジシャンの事を言う。彼らは心理学を用いて相手の言動や僅かな仕草などから相手の心の内を読み解き、それをあたかもテレパシーや読心術と言った超常的な力で成しているように見せているのだ。
 特に視線の誘導や僅かな挙動から相手の次の一手を見抜く能力はずば抜けており、本職の彼らを前にすればまるで自分の心を覗かれているのではという錯覚すら覚える程であった。

 彼らメンタリストには及ばないながらも、颯人も相手の僅かな挙動から大体の胸の内を察する能力には長けている。その技術から、颯人は宮司が明らかに何かを隠している事を見抜いていた。

「宮司さん……あんた、昼間言ってたよな?『事故で亡くした娘夫婦の孫を思い出す』『生きてればちょうど皆さんくらいの年頃』……って」
「確かに……言いましたな」
「その時あんた、明らかに調ちゃんの事を他の連中より長く見てただろ?」
「さて、そうでしたかな? まぁ、あの娘さんの可愛らしさに思わず見惚れていたのは事実ですが」

 なかなかに食えない老体だと颯人は内心で舌を巻いた。年の功と言うかなんというか、この宮司は生きた年数を無駄にせずしっかりと経験を自分の中で昇華させ糧としている。人間として憧れに近い何かを抱かずにはいられないが、今は調と彼の関係性の方が重要だ。

 颯人はここで思い切って手札を切る事を選んだ。

「実は、調ちゃんって本名じゃないらしいんですよ」
「え?」

 調が他の装者達
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