暁 〜小説投稿サイト〜
桑の木の下で
第二章

[8]前話
 若者ははっとした顔になってだ、彼女に答えた。
「実は私も占ったところ」
「私と出会ってですか」
「木の下で」
 まさにそこでというのだ。
「結ばれそして」
「そのうえで、ですか」
「大事を為す子を得ると」 
 その様にというのだ。
「出ていました」
「そうだったのですか」
「これはまさに運命ですね」
 若者は皇蛾の整った顔を見つつ述べた。
「私達の」
「そうですね、それでは」
「これからはですね」
「夫婦になり」
「共に暮らしましょう」
 二人で木の下で見つめ合って語り合った、そして。
 二人は夫婦となった、するとすぐに子が生まれたが。
 天帝は二人の報を聞くと二人を召し出して言った。
「これより人界に下りてだ」
「そうしてですか」
「そのうえで、ですか」
「今人界では治める者が代わる時が来た」
 こう言うのだった。
「だからそなた達が下りてな」
「人界を治める」
「そうすべきですか」
「その子を連れてな」 
 皇蛾が抱いているその子、男の赤子も見て告げた。
「そうするのだ」
「わかりました、では」
「その様に致します」
 夫婦もそれならと答えた。
「これより」
「そして人界を治めます」
「そなたは偉大な帝になるが」
 天帝は若者を見て告げた。
「その子もだ」
「大事を為すと」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
「今よりだ」
「人界に下りることですね」
「そうせよ、よいな」
「わかりました」
「そなたは夫と息子を支えるのだ」
 天帝は皇蛾にも告げた。
「人界の帝となる者と大事を為す子をな」
「それが運命だからこそ」
「あの木の下で夫と会ったこともな」
「それでは」
「うむ、全てはあの扶桑の下からはじまった」
 天帝は厳かな声で語った。
「大事は。ではその大事をだ」
「支えていきます」
 皇蛾は天帝に誓った、そして夫と息子と共に人界に下った。
 夫は黄帝となり人の世の多くのことを定め強力な敵である蚩尤を破った、そして息子は少昊という名になり東出鳥の国を築き後に帝位を継いだ、全ては占いにあった桑の木の下での出会いからだった。中国に伝わる古い話である。


桑の木の下で   完


                      2023・9・11
[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ