第三章
[8]前話
来須は仕事道具を使って木を切っていった、そうして某格闘ゲームの主人公キャラが必殺技を出しているポーズにだった。
木の葉を切って再現してみせた、すると。
屋敷の主袴姿で如何にもという厳めしい顔に口髭の彼がその木を見て言った。
「いや、そうきたか」
「ユーモアや冗談をと言われまして」
「逞しい男とはな」
「昔の格闘ゲームの主人公ですが」
「ううむ、わしはシュミレーションが主でな」
主は自分のゲームの趣味から答えた。
「そっちは疎いが」
「私は恋愛ゲームなので」
奥方も自分のゲームの趣味を話した。
「格闘ゲームは」
「そうですか、それで出来は」
来須は屋敷即ち庭の主の夫婦に尋ねた、横には皇流もいる。
「どうでしょうか」
「いいよ、元々文句を言うつもりはなかったが」
主は来須に答えた。
「これはいい、じゃあこれからもこの木は」
「こうしてですか」
「刈ってくれるか、その分金は出す」
「それじゃあ」
来須も頷いた、そして度々地元の大地主で多くのマンションやアパートそれに大きな水田を持っている彼の屋敷に呼ばれてだった。
その木を格闘ゲームのキャラクターにしていった、そうしてそこでその分の報酬も貰った。そのうえで皇流に言うのだった。
「気に入ってもらって何よりだ」
「そうですね」
皇流もそれはと応えた。
「本当に」
「その分お金も貰うしな」
「しかも楽しめますし」
「刈る方もな、ユーモアとか冗談ってのはな」
そういったものはというと。
「時としてな」
「お互いウィンウィンにしてくれますね」
「いつもそうとは限らないけれどな」
「そうした場合もありますね」
「ああ、こうしてな」
昴流に笑顔で言ってだった。
二人で他の仕事場所に向かった、そしてそこでも汗を流して働いた。そちらではユーモアや上段はなかったがそれでも気持ちのいい仕事が出来て満足したのだった。
格闘植木 完
2023・8・13
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