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会ったこともない人
第二章
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「土佐に乾退助って人がおるきに」
「優れた人か」
「上士にも立派な人がおると聞いちょってな」
 大久保に笑いながら話した。
「実際中岡からもな」
「優れた御仁とですか」
「聞いちょる、だから土佐藩とよおやるなら」
「乾殿とですな」
「話すといいぜよ」
「そうですか、しかしです」
 大久保は龍馬の話を聞いて彼にやや目を鋭くさせて言った。
「坂本殿のお話から察するに乾殿とは一度も」
「ああ、会っちょらんぜよ」
「左様ですね」
「そうぜよ、一度も会ったことないぜよ」
 龍馬ははっきりと言った。
「わしはのう」
「それでそう言われますか」
「駄目かのう」
「いや、乾殿のことは私も聞いています」
 大久保は礼儀正しく答えた。
「立派な方だと」
「人柄も資質ものう」
「上士嫌いの坂本殿がそう言われるまで」
「だからぜよ」
「乾殿はですな」
「協力を仰ぐといいぜよ」
「それでは」 
 大久保はそれならと頷いた、龍馬は龍馬でこうしたことを話していた。結局二人は生前一度も会うことがなかった。
 だが後世になり。
 天国にいる乾退助あらため板垣退助にだ、やはり天国にいる高杉が言って来た。
「乾君いや板垣君いいか」
「相撲を取るのなら乗るぞ」
「残念だが違う、今現世に出ている漫画だが」
 高杉はこちらの話をしてきた。
「君と坂本君が生前に会っているぞ」
「いや、それは君に生きている時に言ったぞ」
 板垣は高杉の言葉に仰天して答えた。
「僕は彼と会ったことがないとな」
「はじめて会ったのはこちらだな」
「会ってあらためて凄い者だと思った」 
 生前思っていた通りにだ。
「実にな」
「それがその漫画ではそうした話でな」
 高杉は真実を語る板垣にさらに話した。
「しかも君は坂本君を散々にいじめ彼の仲間を後ろから刺し殺しているぞ」
「何っ、身分の低い相手をいじめるだと!?」
 板垣はさらに仰天して今度は叫んでしまった。
「僕がか」
「君はそんなことをする人間じゃないな」
「悪戯は好きで喧嘩もしたがそんなことは大嫌いだ」
「そうだな」
「まして人を後ろから刺し殺したりはしない」
「岡田以蔵君にそうしているぞ」
「彼が打ち首になった時か」
 板垣はすぐに察した。
「あの時か」
「そうだが。後藤君も一緒だったぞ」
「馬鹿な、象二郎もあの時岡田君のところにいなかった」
 見届けたりはしなかったというのだ。
「まして僕達は首切りの役を担っていない」
「随分酷く描かれているが」
「今言った通りだ、僕はそんなことをしない」
 また言うのだった。
「それこそ嘘ではないか」
「漫画でもな」
「会ったこともない人をどうしていじめるのだ」  
 龍馬のことを言う、そして同じ頃。
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