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鰻と椰子
第三章

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「めでたい、しかし人間にはまだ恵みが少ない」
「ここでもそう言うか」
「人間達には恵みが少ない」
「そうだと」
「ああ、俺は決闘に負けたら人間達にバナナをもたらすと言ったが」
 このことを言うのだった。
「それは今でもいいな」
「祝いの場だからか」
「それでか」
「そうだ、だからだ」
 そうした場だからだというのだ。
「俺も人間に恵みを与えたい」
「お前は決闘の時バナナを言ったな」
「ではバナナか」
「バナナを人間達にもたらすのか」
「この場で」
「そうする、決闘には勝ったが」
 それでもというのだ。
「人間にはまだ多くの恵みが必要だしな」
「そうだな、ではだ」
「俺達も何か恵みを与えよう」
「トゥナの椰子だけでなくな」
「俺達もな」
「ではな」 
 マウイは神々に笑顔で頷いてだった。
 この場で人間達にバナナをもたらした、他の神々もそれぞれそうした。そしてマウイはこうも言った。
「これからもな」
「何かとな」
「人間には恵みが必要だ」
「我等と尖って不完全だ」
「そうした者達だからな」
「何かあった時にな」
 マウイは笑顔で言った。
「その都度な」
「恵みを与えよう」
「そうしていこう」
「人間達が幸せになる為に」
「是非共な」
「人間と神々は違う」
 式にはトゥナも来ていた、その彼も言ってきた。
「やはりな」
「恵みは必要だな」
「さもなければどうにもならない」
 こうマウイに答えた。
「まことにな」
「そうだな、ではな」
「何かあれば」
「俺達は恵みを与えていこう」
「神としてな」
 こう言い合った、そしてだった。
 神々は今も人間達に恵みを与え続けている、椰子にはじまった話だが椰子だけに留まらなかった。そうしてだった。
 今も人間達は神々の恵みの中で生きている、古の時代だけでなく。オセアニアに伝わる古い話である。


鰻と椰子   完


                      2023・9・14
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