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その頃生まれてなくても
第二章

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「カープはね」
「もっと嬉しいか」
「日本一になったらね」
 その時はというのだ。
「絶対にね」
「そうだよな、僕もな」
 寿は今は冷静な顔になって千佳に話した。
「阪神が日本一になるのはずっとであって欲しいけれどな」
「カープにも頑張って欲しいのね」
「巨人は頑張らなくていいんだ」
 邪悪の権化、まさに全世界の悪徳を凝縮させたかの様なその名前の時点で禍々しいこのチームはというのだ。
「もうな、けれどな」
「カープは頑張れっていうのね」
「他のチームはな」
 巨人以外のチームはというのだ。
「そうして欲しい、どのチームが強くあってこそ」
「巨人以外はね」
「巨人は全試合負けてもいいだろ」
「あそこはね」
 千佳もそれはと応えた。
「構わないわ」
「そうだよな」
「あそこだけはね、けれど」
「ああ、他のチームも頑張って」 
 阪神と共にというのだ。
「そしてだよ」
「切磋琢磨し合って」
「強くなっていって」
 お互いにというのだ。
「日本のプロ野球全体をな」
「強くしていくのね」
「そうなればいいんだ」
「だからカープもなのね」
「強くてな」
「いいのね」
「優勝は渡さないけれどな」
 寿はこのことは譲らなかった。
「それでもな」
「そうなのね」
「ああ、頑張ってくれよ」
「じゃあうんと頑張って」
 そうしてとだ、千佳は寿に言葉を返した。
「そのうえで優勝してあげるわよ」
「言ってくれるな」
「言うわよ」
 それこそと言うのだった。
「こっちだってね」
「そうか、じゃあ負けないな」
「こっちこそね、しかし」
 ここで千佳はこうも言った。
「阪神が三十八年ぶりで」
「ああ、よかったよ」
「いや、よかったけれど」 
 それでもというのだった。
「カープが三十九年でね」
「だからどうしたんだ」
「お父さんお母さんがまだ小さい頃じゃない」
「そういえばそうか」
 寿も言われて頷いた。
「まだな」
「当然私達が生まれてないわよ」
「凄い昔だな」
「そんな頃から日本一になってないのね」 
 千佳はカープのことを話した。
「そうなのね」
「そういえばそうだな、阪神もな」
「そうでしょ」
「リーグ優勝も十八年ぶりだし」
「カープなんて三連覇する前は二十五年以上優勝してなかったのよ」
「クライマックスもずっと出てなかったな」
「そうよ、本当にね」
 まさにというのだ。
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