第二章
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「徳も不徳もな」
「残っている」
「覚えておらずともな」
「魂が」
「そうだ、聞くがその人が忘れたものは消えてなくなるか」
「いえ」
違うとだ、有光は答えた。
「あります」
「その人が忘れてもな」
「左様です、例え誰もが忘れていても」
「その人やものはな」
「そこにあります、誰もが忘れていても」
そうであってもというのだ。
「それはそこにあり御仏はです」
「ご存知だな」
「そこに誰がいても何があっても」
「それは徳も不徳もだ」
そのどちらもというのだ。
「同じだ」
「では」
「そうだ、前世の因縁というな」
「徳も不徳も」
「そこに答えがある、どちらも生まれ変わってもな」
「その生で記憶はなくとも」
「魂にはあるのだ」
徳も不徳もというのだ。
「それは輪廻の中で積み重なっていくのだ」
「ではそうなっていき」
「やがて徳が満ちればな」
「その時にですか」
「気付きな」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「悟りを開けるのですか」
「そうなる」
まさにというのだ。
「人はな」
「そうですか、では生まれ変わっても」
「それは無からはじまるのではない」
決してというのだ。
「前世の徳も不徳もな」
「積み重なっていっているのです」
「徳はさらに積みな」
「不徳は消す」
「前世のな、それもだ」
有実は弟子に確かな声で話した。
「御仏の教えであり」
「我々が為していくことですね」
「そうだ、前世のことを人は容易に知ることは出来ない」
それはというのだ。
「だがな」
「前世のものは確かにあり」
「積み重なられていてな」
「それをどうしていくか」
「そのことも考えつつな」
そのうえでというのだ。
「我等は学びだ」
「修行をしていくことですね」
「そうだ、いいな」
「わかりました、節奏はわかっていませんでした」
率直にだ、有光は己の至らなさを認めた。
「御仏の教えが」
「いや、それがわかったことがだ」
有実は反省し畏まる弟子に述べた。
「大きい、わからなければわかる様になる」
「そういうことですか」
「それだけのこと、ではこれからもな」
「学び修行し」
「人に説いてな」
「何時かはですね」
「悟りを開きな」
そしてというのだ。
「人を救うのだ」
「そうしていきます」
有光は澄んだ顔で応えた、そうしてだった。
この日からそれまで以上に学び修行に励み人に説いた、そのうえで。
長じて高僧と呼ばれる様になった、そして幾度かの生を経て悟りに至った。それぞれの生では記憶はその時だけだったが徳も不徳も積まれ徳を増やし不徳を消した結果である。とある寺に伝わる話である。
輪廻の中で 完
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