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富士山は簡単には登れない
第一章

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                富士山は簡単には登れない
 国府二三男は山のガイドをしている、登山グッズの店で働きながらその仕事もしているが今は富士山にいる。
 この日本で最も高い山にいてだ、彼は今回自分が受け持っている登山客達に話していた。黒髪を短くしていて面長で優しい顔立ちで一八〇近いすらりとした背で登山服で身体を覆っている。
「やっぱりここは富士山ですからね」
「生半可じゃ踏破出来ないですよね」
「私達踏破が目標ですが」
「それでも」
「はい、まずは事前に体調を整えて」
 そうしてというのだ。
「服装や持ちものもです」
「万全にですね」
「整える」
「それからですね」
「さもないとです」
 それこそというのだ。
「踏破は無理です、何か不備がありますと」
「登山出来ないどころか」
「命に関わることもありますね」
「そうですね」
「富士山どころか山自体が危険で」
 そうした場所でというのだ。
「本当に舐めたらです」
「その時点で危ないですね」
「よく遭難の話とかありますし」
「富士山でなくてもですね」
「気を付けて下さい、自然は怖いです」
 国府は真顔で言い切った。
「そして特にです」
「富士山はですね」
「気を付けないといけない」
「そうですね」
「勿論出来るだけ無理をしない様にして」
 そのうえでというのだ。
「進んでいきます、けれど何かあったら」
「その時はですね」
「ガイドさんにお話する」
「そうするんですね」
「そうして下さい、無理も無茶も駄目です」
 絶対にと言うのだった、そして自分がガイドをする登山客の服装や持ちものを細部までチェックしてだった。
 それでだ、体調も聞いてだった。
 富士山の登山をスタートした、彼は自分が言った通り無理をせずだった。
 登山を進めていった、途中の休憩所にはよって睡眠も食事もだった。
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