第二章
[8]前話
「行かないとな」
「駄目ですか」
「それが礼儀だしどんな嫌な奴でもな」
それでもというのだ。
「死ねば仏って言うだろ」
「そのこともあって」
「ここはな」
「どっちかに行くことですか」
「そうだよ、じゃあな」
「行きますか」
「そうしような」
斎藤は甲斐に言った、そしてだった。
二人でお通夜に出た、その時に死んだ者の両親にも挨拶をした。お通夜が終わると二人で帰ったが。
その帰り道でだ、斎藤は甲斐にこんなことを言った。
「それなりに人来てたな」
「そうでしたね」
「やっぱりな」
「ご近所の礼儀で」
「あとな」
「死んだら誰も仏さんですね」
「だからな」
「結構な数の人が来たんですね」
「確かに嫌われ者だったさ」
今日お通夜に行ったその相手はというのだ。
「お前が言う通り人間の屑って言ってもな」
「その通りって奴でしたね」
「けれどな」
「そんな奴でも死ぬとですね」
「それなりの礼儀を払うものでな」
それでというのだ。
「やっぱり仏さんだからな」
「お通夜でもお葬式でもですね」
「出て冥福はな」
「祈らせてもらうことですね」
「生まれ変わったらもうちょっとでもな」
斎藤はこうも言った。
「ましな奴になる様にもな」
「祈ることですか」
「ああ、そうしてやろうな」
「せめてですね」
「死んだ時位はな」
「だからお通夜やお葬式に行くんですね」
「どんな嫌な奴でも死んだらな」
その時はというのだ。
「これからもな」
「それも人間のやることですね」
「そうだよ、じゃあこれからもな」
「行きます、付き合いがあったら」
甲斐もこう返した。
「やっぱり」
「ああ、冥福位はな」
「祈るべきですね」
「最低でもな」
「そうしてやるべきですね」
「人間ならな」
こう言ってだった。
二人で帰った、以後彼のことを話すことはなかった。だがせめてもと冥福を祈ったことは事実であった。
嫌いな相手もそうなると 完
2023・9・20
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