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五柳
第二章
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「こうしてだよ」
「五本ですね」
「植えているんだ」
「そういうことですね」
「これ位賑やかなのはいいかな」
 陶淵明は旧友に問うた。
「隠棲しても」
「いいと思います、風情もです」
「隠棲咲には必要かな」
「そう思います」
「ならいいよ、ではこのままね」
「柳をですか」
「五本ね」
 それだけというのだ。
「植えていくよ」
「そうされるといいです」
 旧友も笑顔で応えた、こうした話だった。
 陶淵明は生きていた頃そうしていた、そして。
 東晋は滅びそれから中華は再び統一され唐の時代もかなり進んでからのことである。
 白楽天、生真面目な顔立ちでそこに深い憂いを込めている彼は今は陶淵明の屋敷があったという場所に向かっていた。
 そしてだ、その途中に供の者に話した。
「あの柳達がな」
「陶淵明が植えたという」
「それが今もあるというからな」
 だからだというのだ。
「是非だ」
「見に行かれるのですね」
「これからな、是非だ」
「五本ありましたね」
「その五本の柳達をだ」 
 まさにというのだ。
「見たい」
「それで今こうしてですね」
「向かっているのだ、それでだ」
「それで?」
「感じるところがあれば」
 その時はというのだ。
「やはりな」
「詩をですか」
「読みたい」 
 こう言うのだった。
「是非な」
「そうですか、それでは」
「今からな」
「行かれますね」
「そうする」
 道中こうした話をしてだった。
 白楽天は陶淵明の屋敷があった場所に行った、すると。
 柳は確かにあった、だが。
「三本ですね」
「五本ないな」
「左様ですね」
「五本あると思っていてだ」 
 白楽天は供の者に無念の顔で述べた。
「そのうえでだ」
「こちらまでですね」
「来たのだが」
 それでもというのだった。
「これがだ」
「三本ですね」
「これだけか」
「あれから何百年も経っていますし」
「木も減るか」
「そうなるかと」
「言われれるとそうだが」
 白楽天は一度は頷いた、だが。
 それでもだ、こう言うのだった。
「実にだ」
「寂しいですか」
「見ると五本ないとな」 
 さもないと、というのだ。
「やはり寂しい」
「そうですね、では詩は」
「感じるところはあった」
 それ自体はというのだ。
「だからな」
「詠われますか」
「これよりな」
 こう言って実際にだった。
 白楽天は柳達を詠った、そのうえでその場を後にした。そして帰りの道中でまた供の者に言ったのだった。
「月日が経つと何もかもが変わり」
「柳も然りですね」
「陶淵明が詠った柳舘が減るのも道理か」
「晋の世でしたし」
「今は唐だ」
 しかも王朝が興ってから既に長く
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