第二章
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「そうなのね」
「そうだね、何でも変わって」
「ランドセルもですね」
「中身も私が使っていた頃よりも」
自分がまだ小学生だった頃のことも思い出して言った。
「頑丈になったみたいだし」
「ちゃんと使えば六年どころかね」
「もっともちますね」
「そうね、ただ私は色は」
真宮子はここでこうも言った。
「あの頃だと何色がよかったかしら」
「何色って?」
「ええ、私日本ハムファンでしょ」
息子にこのことを言うのだった。
「五十年以上前だけれど」
「五十年以上前って日本ハムになってるかならないかじゃないかな」
「そうよね」
妻は夫のその言葉に頷いた。
「大体ね」
「それ位だよね」
「東映とか日拓かしら」
親会社の話もした。
「大体」
「日拓だと七色ユニフォームだったね」
息子はこの頃の話をした。
「それぞれの選手でユニフォームが違ったね」
「そうだったのよね」
「じゃあランドセルは七色になるのかな」
「そうなるかしら」
「随分派手なランドセルね」
「そこまで派手じゃなくていいわ」
別にとだ、真宮子は息子に考える顔で答えた。
「お父さんは横浜だから当時だと緑か黄色かしら」
「太洋ホエールズの頃ですね」
美帆が応えた。
「それって」
「横浜大洋になって濃紺のユニフォームになったのよ」
「その頃はそうですね」
「碧も黄色もいいけれど七色は派手過ぎるわね」
「じゃあどの色がいいですか?」
「そうね、もうこうなったら」
真宮子は流石に七色のランドセルはないとしてこう言った。
「妥協してオレンジよ」
「昭和の終わりから平成の頃か」
「あの頃のユニフォームの色ですか」
「それにするわ。大沢親分の色ね」
笑顔でこうも言った、息子夫婦とそんな話もした。そして後日。
桜子が阪神帽子を被ってもう一つ黒と黄色の縦縞のランドセルが欲しいと言った時だ、真宮子は苦笑いで言った。
「それは目立ち過ぎるしランドセルは一つの方が楽よ」
「だからなの」
「ピンクのままでいいんじゃない?」
「ううん、ピンク好きだし今のランドセル馴染みあるし」
「それじゃあね」
「このままなのね」
「それでいた方がいいわ」
こう言うのだった、そして桜子も祖母のその言葉を言われてみればという顔になって頷いた。そうしてそのランドセルを使っていった。
好きなランドセル 完
2023・8・22
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