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何故知ってる
第三章
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「何とかしたら?」
「そう言われても仲が悪いものは悪いのよ」 
 友利は自分のご飯を食べつつ話した。
「もうね」
「相性の問題ね」
「相性が悪いのに」
 それでもというのだ。
「ずっとよ」
「一緒にいるのね」
「いたくないのにね」
 それでもというのだ。
「そうなってるからよ」
「仕方ないのね」
「そうよ、何時腐れ縁がなくなるのか」
 友利は腕を組み口をへの字にさせて述べた、兎角だった。
 友利も剣も今回のことにはそれぞれの母親について困った、だが母親達は仲がいいままでしかも相変わらずお互いの家庭のことを話してそれを家でも自分達の夫即ち二人の父親達にも話して二人の耳にも入ってだ。
 お互いにだ、言い合うのだった。
「お前佐藤選手好きなんだな」
「そう言うあんたは青柳投手ね」
「阪神の人なら誰だっていいだろ」
「それはこっちの台詞よ」
 野球で言い合いだった、他には。
「妖怪ウォッチはジバニャンだろ」
「こまさんでしょ」
「女の子でロボットアニメかよ」
「男の子で乙女ゲー?」
 こんな言い合いばかりして高校時代を過ごしてだった。
 そしてだ、そのうえでだった。
 二人は大学も同じで卒業してもだった。
 市役所に入った、そこでも同じ職場であり。
「何処まで一緒にいるんだよ」
「それはこっちの台詞よ」
「就職先も同じなんてな」
「いい加減別れたいわ」
「こっちの台詞だよ」
 こんなことを言い合う、そして互いの母親から相手のことを聞くのも同じで。
 やはり言い合う、だが二人共家庭を持ったが今度はお互いの子供達が仲良しで。
「子供にそんなに怒るな」
「あんたは甘やかし過ぎなのよ」
 子供達から聞いたそれぞれの家庭のことでだった。
 やはり言い合った、それぞれ独立して自分達の家を持っても結局関係は変わらなかった。だが気付けばだった。
 二人は落ち着いてだ、定年を迎えてシルバーワークを迎えた頃にはもうお互いのプライベートについては言い合わなかった、それは何故かというと。
「もうこの歳になったらな」
「お互いのことはどうでもいいわね」
「ああ、何十年もの付き合いだ」
「かれこれ六十年以上のね」
「それならもう色々知ってな」
「知り抜いてね」
「今更どうでもいいな」
 剣はすっかり年老いて白髪になった頭を撫でつつ言った。
「知ってることばかりで」
「そうね、もう言い合うネタもないわ」
 友利も皺だらけの顔で述べた。
「この歳になったら」
「そうだな、後は精々な」
「長生きしましょう」
 こうした話をしてだった。
 二人はそれぞれ老後を過ごした、何十年もお互いのことを言い合った二人はもう言い合わなかった。静かな老後を過ごす二人を見て誰もかつて彼等が言い合っていたとは
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