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もう伝統工芸
第三章

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 彼と共にグランド花月から横丁を通ってだった。
 そのうえで日本橋に入った、そこの古いホビーを扱っている店に入って祖父が箱から懐かしのブリキのおもちゃどのキャラクターのものか秀長の知らないそれを店員に見せるとだ、
 店員は仰天してだ、二人に言った。
「こんなのまだあったんですか」
「まだってえらいびっくりしてるな」
 秀長は顔見知りのその若い店員に目を瞬かせて言った。
「どないしたんや」
「どないしたもこないしたもないですよ」
 店員は秀長にこう返した。
「今時こんなブリキのおもちゃないですから」
「確かに昔のもんやな」
「もうおもちゃやないです」
 大阪弁を出して話した。
「もう骨董品いや」
「いや?」
「工芸品ですよ」
「そこまでかいな」
「滅茶苦茶価値がありますよ」
 このブリキのおもちゃはというのだ。
「ほんまに。よお手入れされてて」
「それでか」
「そうです、若し買い取るとなると」
 店員は秀長そして彼の隣にいる晴明に話した。
「百万は優に」
「そこまでかいな」
「いきます」
「そこまでか」
「もうおもちゃの値段やないですね」
「工芸品でも相当やな」
「そうです、売りますか?」
 こう二人に聞いてきた。
「どうしますか?」
「それは」
 どうかとだ、孫と祖父は顔を見合わせて話した、そしてだった。
 結局売らず大切にすることにした、祖父がそう決めた。それで地下鉄を使って家に帰ってからだった。
 秀長は晴明に考える顔で尋ねた。
「売らへんかったの何でや」
「いや、百万と言われてわしもな」
 祖父は自分に尋ねた孫に答えた。
「実際心が動いたわ」
「売ろうかってな」
「そやった」
「そやってんな」
「けどな」
 それがというのだ。
「子供の頃から持ってて手入れもしてるな」
「大事なもんか」
「わしの想いでの品の一つやさかいな」
 それでというのだ。
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