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レナータ=テバルディの様に
第二章

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「俺より高いかもな、けれどな」
「私の背が高くても」
「お前の性格と顔が好きだからな」
 浪川は強い声のままだった。
「告白したんだ、それで返事は」
「そんなこと言われて断れる筈ないでしょ」 
 瞳は浪川に泣きそうな顔で応えた。
「背はどうでもいいって言われて」
「それでかよ」
「ええ、私でよかったら」
「ああ、付き合っていこうな」
 浪川はここで笑顔になった、それで二人は交際をはじめたが。
 瞳は浪川にだ、ある日こう言われた。
「昔イタリアにレナータ=テバルディってオペラ歌手いたらしいな」
「そうなの」
「この人ソプラノ、女の人の高音でな」
「詳しいわね」
「実は芝居とか好きだからな」
 それでというのだ。
「オペラも興味あってな」
「その人のこともなのね」
「本読んで知ったんだけれどな」
「そうなのね」
「この人一八五あったらしいんだよ」
「えっ、女の人で一八五!?」
 これには瞳も仰天した。
「無茶苦茶高いわね」
「そうだよな」
「うちの学校で男子でもね」
「そんなでかいのいないな」
「無茶苦茶大きいわね」
「それで目立っていたけれどな」
 テバルディという歌手はというのだ。
「穏やかでお洒落で優しくてな」
「いい人だったの」
「歌手としても凄かったけれどな」
「性格もよかったのね」
「それで皆から愛されて慕われていたらしいんだよ」
「そうなの」
「だからお前だってな」
 瞳にあらためて言った。
「そんなな」
「背のことはなのね」
「気にしないでな」
「やっていけばいいわね」
「ああ、大きくてもな」
 それがコンプレックスになってもというのだ。
「いいだろ、だからこれからもな」
「大きいことは気にしないで」
「やっていこうな」
「そうね、そうするわ」
 瞳は浪川に微笑んで応えた、そして実際にこの時から自分の背のことは笑って言える様になった。だが。
 暫くしてからテバルディの写真、舞台や練習の時に男性歌手と一緒にいるのを見て思わず絶句してしまった。
「うわ、大きいわね」
「そうだよな」
 一緒に写真を見ている浪川もそうなっていた。
「写真はじめて見たけれどな、俺も」
「凄いわね」
「こんな大きいなんてな」
「流石にびっくりよ」
 こう言うのだった、男性歌手より頭一つ分は大きいテバルディの写真を見て。だがそれでも今の瞳はそれだけで終わった。そして浪川と楽しい話をはじめたのだった。


レナータ=テバルディの様に   完


                      2023・7・21
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