暁 〜小説投稿サイト〜
海底で微睡む
狭間-7

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 ゴボ、ゴボゴボ。

 なんだか、息が苦しい。
 そう思って口を開けるとさらに苦しくなって。目の前が霞んでいく。

 綺麗な青が、遠くの方に見える。

 私は、どんどん深くへ。闇の中へ。深海へ、落ちていく。

 この風景は記憶にないけれど……何を意味しているかは大体想像がつく。
 きっと、私を殺した"彼"が、ずっと見ている風景。

(本当に独りぼっち……)

 藍色に見える宇宙、輝く星々から一番遠い場所。
 あの素晴らしい茜色の空も、深海の闇は飲み込んでしまう。
 紅葉はここまで落ちてはこない。
 どこまでも広がっていると錯覚するような若草色の原っぱも、深海まではやってこない。
 青緑の美しいあの水も命を飲み込むけれど……きっと、魂を喰べた数はこの闇には到底叶わない。

 どこまでもどこまでも落ちていく。
 暗い。寒い。苦しい。

 …ああ。こんなところにいては、誰にも見つけてもらえないわよね。

『幻なんかじゃない、実在するんだよ』
『……存在を否定するつもりかい?』

 たとえ、本当に存在するのだとしても、この闇の中では誰にも見つけてもらえない。
 ずっとこの中にいたのだとしたら、あの時、みんなで話していたあの瞬間。どれだけ喜んで、期待していたのだろう。

 やっと見つけてもらえた。やっと自分以外の誰かと話せた。
 やっと、やっと。待ちに待ったこの時が。

(……なのに、私は)

 男の人が怖い。お父さんを見ていたら、怖いと思うようになってしまった。
 そのせいで、私は彼にひどい態度をしてしまって、彼を傷つけた。

 彼がずっとずっと望んでいたであろう喜びを、私が壊した。

 …私が死んだのは、当たり前。ひどいことをしたんだもの。

(叶うなら、もう一度やり直したい。それができないなら、もう一度彼に会って、謝りたい。それもまたできないなら……)


(すべて、やりきって。しぬなら、それからがいい)


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