第90話 カプチェランカ星系会戦 その1
[1/11]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
宇宙歴七九〇年 二月二六日 二三〇〇時 ダゴン星域 カプチェランカ星系
カプチェランカ星系に侵入を果たした帝国軍艦隊に対する、同盟軍遠征部隊先任である第八艦隊司令部から送られてきた作戦行動案は第四四高速機動集団司令部が予想した通り、惑星カプチェランカの衛星軌道上で迎撃するという極めてシンプルなものだった。
機動迎撃するには敵に比して味方の数が少ないこと。二箇所の跳躍宙点から現れた帝国艦隊のうち、数の少ないアスターテ星域方面から現れた部隊が、ティアマト星域方面から現れた部隊の進路に寄り添うような形で合流を果たしたこと。以降の偵察行動より合流した敵が、ほぼ一直線に惑星カプチェランカへと押し寄せていることなど、下手に動いて乱戦状態になるよりもじっくり腰を据えて第一〇艦隊が到着するまで戦い続けるほうが、勝算が高いと司令部は見たのだろう。
陣形の指示は立方横隊。中央に第八艦隊、左翼に第四四高速機動集団、右翼に第三五三・第三五九・第三六一独立部隊と第四一二広域巡察部隊が配置される。アスベルン星系で第四四高速機動集団が帝国艦隊と相対した時と同様に、陣形がシンプルなので用兵の自由度は高い。
一方で接近する帝国艦隊の行動は刻々と報告されている。一九〇〇時にはこちらの存在を明確に把握し、陣形を再編すべく進撃速度を落とした。構成された陣形はこちらと全く同じ立方横隊。中央に約一五〇〇〇隻、右翼に約三五〇〇隻、左翼に約二五〇〇隻。後方に一五〇〇隻ほどの集団が三つに分かれて存在しているのは、各部隊の支援部隊と考えられる。
こうなると本当にアスベルン星系における遭遇戦と、規模は違えどもまったく同じような状況だ。そして立場はあの時とは逆である。敵と味方の戦力比は戦闘艦艇だけで一七三〇〇隻対二一五〇〇隻。火力比は一対一.五六。同一陣形のままで真正面から削り合いをするとなれば、同盟軍が全滅するまでにだいたい七五時間程度と推定される。金髪の孺子なら創造性の欠片もない戦いとでも言うだろうか。
カプチェランカから同盟軍を引き剥がしたい帝国軍としては積極攻勢に出るだろうし、こちらも遅滞戦術を取るから虚々実々の駆け引きとなる。シトレの用兵家としての手腕が問われるだけでなく、各部隊現場指揮官の柔軟な対応力も求められる。
そして左翼二五〇〇隻の敵陣重心点付近に戦艦ネルトリンゲンが確認されている。中央部隊はイゼルローン要塞駐留艦隊と思われるが、そうなると第四四高速機動集団の正面にいる右翼三五〇〇隻の出所は一体どこからだろうか。やはりマリネスク副参謀長の言う通り、ティアマト・ヴァンフリート・アルレスハイムといったイゼルローン回廊より同盟側にある帝国支配星域に配置された防衛艦隊を再編成したものか。その割には部隊構成と行動に秩序と統一性が見受けられる。
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ