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ナポレオンの柳
第二章

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 島の者達はその芽を大事に育て木にした、その話を聞いてだった。
 ナポレオンを敬愛する者達が島に来てこう言ってきた。
「よかったらです」
「シダレヤナギの枝をですか」
「あの方のお墓の傍にあるあの木の」
「それを折ってですか」
「欧州に持ち帰られるのですか」
「水の入った瓶に入れて」
「そうしたいのですが」
 こう申し出るのだった。
「あの方が愛した木なので」
「だからですか」
「それで、ですか」
「そうされますか」
「枝を欧州まで持って帰られますか」
「駄目でしょうか」
 島の者達にあらためて問うた。
「そうして」
「いえ、お願いします」
「あの方を慕って頂けるなら」
「心からそうされるならです」
「宜しくお願いしま」
「そうして下さい」
「そしてあの方を想って下さい」
 島にいる者達はナポレオンを慕っていた、それでだった。
 そのことを許した、すると。
 島を訪れる者達はその様にしてナポレオンの墓の傍にあるシダレヤナギの枝を彼等の故郷である欧州に持って帰った、すると。
「あの枝がですか」
「水の入った瓶に入れて欧州に持って帰るとですか」
「そうするとですか」
「生きていて」
「値を伸ばしてですか」
「はい、植えられる様になっていて」 
 島に来たナポレオン支持者の若い青年が島の者達に話した。
「次第に増えていっています」
「そうなのですか」
「あの方が愛された木が今ではですか」
「一度嵐で全て倒れ」
「お墓の傍に植えたのですが」
「それがですか」
「はい、植えられる様になり」
 そしてとだ、青年は言うのだった。
「それがです」
「増えてですか」
「欧州の中にそうなっていて」
「あの方の柳とですか」
「呼ばれる様になっていますか」
「そうです、今ではです」
 青年は明るい顔で話した。
「あの方も否定されなくなりました」
「かつてはフランスで王制が戻り」
「あの方は否定される様になりましたが」
「それもですか」
「変わったのですか」
「あの方の甥の方が政権に就かれ」
 ルイ=ナポレオン彼がというのだ。
「そしてです」
「そうしてですか」
「それで、ですか」
「あの方も否定されなくなり」
「認められる様になったのですか」
「再び、菫もです」
 彼が愛した花もというのだ。
「今ではです」
「また愛される」
「そうなっていますか」
「そして柳もですか」
「そうなっていますか」
「はい」
 実際にというのだ。
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