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ウルクの樹
第二章

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「私も前に樫の木を流させてしまった借りがあるからな」
「何とかしたいか」
「だが蛇やズーだけなら何とかなってもな」
 黒い濃い髭で顔の下半分を覆い強い光を放つ黒い目と短い黒髪に逞しい大柄な身体を持つ彼に話した。
「しかしな」
「三つ共でそれぞれの数が多いとな」
「どうにもならない」
「これはウルクのこと」
 ギルガメスは南風の神に話した。
「私が治める地のな」
「ではか」
「私が何とかしよう」
 ギルガメスは共に席に座って向かい合って話している神に応えた。
「そうしよう」
「貴殿がそうしてくれるか」
「うむ」
 ギルガメスは答えた。
「そうする」
「貴殿の力を使うか」
「そうする、ではな」
「それではか」
「今すぐにな」 
 まさにというのだ。
「出てな」
「そうしてか」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「女神の憂いをなくそう」
「では」
「今からイナンア神の園に行って来る」 
 巨木のあるそこにというのだ、そして実際にだった。
 ギルガメスは大きな斧を持って園に来た、すると。
 蛇も嵐の精もズーも彼の姿を見ただけで退散した、これにはイナンナも唸った。
「何と、あの生きもの達を全て退けるとは」
「それもその姿を見せただけで」
「流石はギルガメス殿ですね」
「神の血を引く無敵の英雄」
「その強さと威容は誰から見ても恐ろしいのですね」
「それだけに頼りになる」
 まさにとだ、イナンナは言った。
「そういうことね」
「左様ですね」
「いや、お見事です」
「まことに」
「そうね、これはお礼をしないといけないわね」
 イナンナはこう言ってそしてだった。 
 実際にギルガメスに望みのものを聞いた、すると彼はこう答えた。
「楽器が欲しいな」
「楽器がなの」
「今ウルクの民達は音楽が乏しい」
 そうした状況だからだというのだ。
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