第百三話 夏休みの宿題その五
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「あの酷さは」
「そう、女の子のよ」
「純真な残酷さね」
「悪いことを」
これをというのだ。
「悪いとね」
「思っていないのね」
「そうしたことを書いたのが」
「あの作品ね」
「そうなのよ」
咲も話した。
「物凄い非道だけれど」
「純真無垢って非道なのね」
「時としてね」
「そうなるのね」
「それでね」
咲はさらに話した。
「あの兎は悪いことしたともね」
「思ってないのね」
「最初から最後までね」
「それで狸を殺しても」
「汗かいちゃった、でね」
まさにこの言葉でというのだ。
「全部ね」
「終わりね」
「狸は惚れたが悪いかで」
「叩かれて溺れて」
そうしてというのだ。
「もがき苦しみながら死ぬけれど」
「それ見て終わりね」
「そうなの、ただあの狸って」
咲は今度は彼の話をした。
「モデルいるらしいし」
「そうなの」
「作家の田中英光さんがね」
太宰と同じ無頼派に属する作家である、代表作は自身のオリンピックに参加した時を書いたオリンポスの果実という小説である。
「そうだったらしいよ」
「何処かで聞いた名前ね」
「作家の田中光二さんのお父さんで」
咲はまずはこのことから話した。
「太宰のお墓の前で自殺してるの」
「あの人のお墓の前で」
「そうなの、愛人さんのことで奥さんと揉めて」
「それで自殺したの」
「何か自暴自棄みたいになって」
「そうしたの」
「お薬飲んで。ただすぐに編集者の人が助けて」
そうなってというのだ。
「病院に連れて行ったけれど」
「手遅れだったの」
「いや、病院何処も手が空いてなかったりしていて」
「ああ、それで盥回しにされて」
「助かった筈なのに」
それがというのだ。
「そのせいで手遅れになって」
「お亡くなりになったの」
「そうなの」
これがというのだ。
「どうやらね」
「残念なことね」
同級生もこのことを聞いてしんみりとした顔になって述べた。
「それはまた」
「そうよね」
「いや、本当にね」
「実際この人大柄で色黒で」
田中英光という人物はというのだ。
「飾らない人だったらしいのよ」
「そうなの」
「何か自分の作品で好きな人についてね」
「あんな風だったの?」
「いや、何かずっと好きだ好きだってね」
その様にというのだ。
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