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お婆さん熊の幸せ
第一章

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               お婆さん熊の幸せ
 ヒマラヤグマのチャダは雌で白く長い毛を持っている、見れば。
 かなりの高齢だ、チャダを保護したホワイトロックベアシェルターという動物保護団体のスタッフの一人でウクライナで勝透している。ミハエル=ゴスリコフ若く青い目と長い顔と短い金髪を持つ長身の青年は先輩スタッフに彼女のことを聞いて顔を曇らせた。
「もう二十五歳ですか」
「熊は大体二十五か三十が寿命でな」
「もうお婆さんですか」
「それで目も殆ど見えなくなっていてな」
 そうしてとだ、先輩は彼に話した。
「歯もな」
「かなり減っていますか」
「ああ、何でも親が捕まって」
 元々野生だったのがというのだ。
「それでこの国で生まれてな」
「ウクライナで」
「そしてだよ」 
 そのうえでというのだ。
「十二年はな」
「大きなサーカス団にいて」
「そこで芸をさせられていてな」
 そうしてというのだ。
「使いものにならなくなったって思われてだよ」
「個人経営のサーカス団に売られて」
「それから七年な」
「僕達がそのサーカス団から保護するまでですね」
「ああ、あそこにいた他の熊や狼達と一緒にな」
「檻に入れられたままで七年ですか」
「サーカスは最近問題になってるな」
 先輩は嫌そうに話した。
「動物虐待だって」
「アメリカでそれで生きもの使うの禁止されて潰れたサーカス団ありましたね」
「三歳の子供の象を酷使して死なせてな」
「それからでしたね」
「全部のサーカス団がそうじゃないけれどな」
「中には碌でもないところがありますね」
「ああ、それでな」
 先輩はさらに話した。
「チャダもだよ」
「そうしたところにいましたね」
「ああ、それでもうお婆さんだけれどな」
 それでもというのだった。
「折角保護したんだ」
「それならですね」
「大事にしないとな」
「その通りですね、それでですね」
「他の保護した子達と一緒にな」
 そのチャダ、すっかり弱りきっている彼女を見つつ話した。
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