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派手な軍服
第一章

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               派手な軍服
 第一次世界大戦がはじまった時にだ。
 フランス軍のある将軍は敵であるドイツやオーストリアだけでなく同盟国であるイギリスやロシアのそれぞれの軍隊の軍服を見て思わず嘲笑した。
「何とまあ格好の悪い軍服だ」
「全くですね」
「どの国の軍服も」
「地味な色で」
「随分と恰好悪いです」
「なっていません」
「軍服は飾るものだ」 
 将軍は強い声で言った。
「それは我等将校だけではない」
「はい、下士官や兵士も同じです」
「軍にいるならです」
「着飾ってです」
「恰好よくあるべきです」
「ナポレオンの頃を思い出すのだ」
 その頃の軍隊をというのだ。
「我等は青でな」
「イギリス軍は赤でしたね」
「プロイセン軍は黒、オーストリア軍は白で」
「ロシア軍は緑でした」
「それぞれの色が国のイメージにもなっていた」
 そこまでのものだったというのだ。
「そしてな」
「そのうえで、でしたね」
「どの国も着飾りです」
「見栄えを競い合っていました」
「そうしていました」
「そうだった、しかしだ」
 将軍は馬鹿にしきった笑みで話した。
「それがだ」
「昨今はですね」
「どの国も地味な色です」
「まるで何処かに隠れる様な」
「そんなものです」
「何でもイギリス軍のアフリカでの戦争から得た教訓らしいが」
 ボーア戦争のことである、南アフリカと言われる様になるその地での戦争でイギリスにとっては多くの犠牲も出した苦い戦争でもあった。
「しかしな」
「それでもですね」
「随分と悪い色です」
「どの国も」
「しかしな」
 それでもというのだ。
「我が軍は違う」
「はい、フランス軍は」
「これからも飾ります」
「軍服についても」
「普段からそうですが」
「我が国は常に世界の美を主導してきた」
 将軍は笑って話した。
「それは今もでありこれからもだ」
「それならです」
「軍服も同じであり」
「このままいきましょう」
「見事に」
「当然だ、では軍を動かすのだ」
 将軍は自信満々で命令を出した、そうしてドイツ軍との前線ベルギーの中立を侵害してやって来た彼等に対してだ。
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