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池のほとりの
第一章

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                池のほとりの
 鹿島の話である。
 この池に神之池という池があるがこの池はかつては寒田と安是という二つの沼であった。そしてそのそれぞれのほとりに社があった。 
 寒田の社には郎という若者が安是の社には嬢子という娘がいた、二人はそれぞれの社で神に仕えていたが。
 郎は非常に整った外見であったが相手はおらずそれを求めていたが。
「安是のですか」
「あちらの娘の嬢子はな」
「そこまでなのですか」
「うむ、美しい姿をしていてな」
 父が彼に話した。
「そしてだ」
「あの娘も一人なのですか」
「相手がおらぬそうだ」
「そうなのですか」
「だからだ」
 父は郎に話した。
「今度歌垣の日になるな」
「歌を詠み」 
 和歌をというのだ。
「そうしてですね」
「それを交換するな」
「それが行われますが」
「その時にだ」 
 こう息子に言うのだった。
「あの娘も出るらしいからな」
「その時に会って」
「そのうえで相手を見てな」 
 そうしてというのです。
「どうだろうか」
「父上がそう言われるのなら」
 郎は父の言葉に頷いた、そしてだった。
 考える顔になってだ、そのうえで答えた。
「行かせて頂きます」
「うむ、ではな」
「その場においてです」
「嬢子がまことに美しいならか」
「そのうえ心根がよければ」
 それならというのだ。
「私もです」
「妻に迎えるな」
「その娘もいいと言うのなら」
 嬢子の方もというのだ。
「その様に」
「それではな」
 父も頷いた、そのことはというと。
 嬢子も彼女の母から話を聞いて言った、彼女も非常に整った顔立ちである。
「それではです」
「ええ、若しもね」
「郎という方がです」
 その彼がというのだ。
「非常に整った外見の方で」
「そのうえ心根がよくて」
「その方がいいと言われるならです」
 それならというのだ。
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