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清掃業は大事に
第二章

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「それでね」
「小倉っちそう言うんだな」
「ああいうのが本当に汚いっていうのよ」
「清掃業は汚くないか」
「別に牛や豚殺してもね」
 愛花はこうした仕事に対する偏見も存在していることも知っていて言った、部落差別とも関係があることも。
「別にね」
「汚くないよな」
「全然ね、お風呂入ってね」
「服洗濯したら終わりか」
「そうよ、この世の中に欠かせないお仕事でしょ」
「清掃業もか」
「それで蔑む方がおかしいのよ」
 こうも言ったのだった。
「本当にね」
「そう言ってくれて嬉しいよ、俺もそのつもりで働いてるけどな」
「蔑む人がいるって聞いたから」
「八条芸能の新喜劇の掃除行ってた先輩が言ったんだよ」
「何て?」
「他の事務所から来た巨人贔屓のいつもしゃもじ持って人の家に上がり込んで飯食ってる芸人さんな」
 その芸人のことを話した。
「知ったかぶりばかりしている」
「ああ、あの人ね」
「あの芸人さんが露骨にな」
「その人馬鹿にしたのね」
「汚いとか言ってな」
 そう言ってというのだ。
「馬鹿にして笑ってたってな」
「あの人評判悪いでしょ」
「色々聞くな」
「馬鹿にするのはそんな人ってことよ」
「カスだけか」
「だからね」
「カスの言うことは気にしなくていいか」
「そうよ、あんたは胸を張ってね」
 そうしてというのだ。
「やっていけばいいのよ」
「そういうことか」
「ええ、じゃあこれからもね」
「頑張っていけばいいか」
「そうよ、そういっていってね」
「そうだな、俺が思ってるままな」
「これからも宜しくね」
 自分が働いている場所を奇麗にしてくれている彼に笑顔で告げた、そしてこの日は一緒に昼を食べてそれからも知った者同士で仲良くしていった。
 そして後日だった。
「あの芸人さん痴漢で捕まったわね」
「そうだな、そんな奴だと思ってたけどな」
「そうなったわね」
「そんな奴の言うことだな」
「そうよ、だからね」
「これからもな」
「頑張っていけばいいのよ」
 愛花は坂本にあらためて言った、そして坂本も自分の仕事に励んでいった。そうして奇麗にしていった。


清掃業は大事に   完



                   2023・5・26
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