暁 〜小説投稿サイト〜
最期の祈り(Fate/Zero)
忘れ去られた過去
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
す」
しかし、と言葉を続ける。
「理屈よりも、思い出して下さい。彼と……衛宮さんと過ごした日々を。あのような態度をとっていた私が言っても説得力は無いでしょうが、一夏さん達が一緒に過ごした衛宮さんを……」
「解っている!俺の知っている衛宮切嗣という男は、本当に良いやつだって!だから納得出来ないんだよ……何で事情も話さずに」
セシリアも一夏の言いたい事は良くわかっていた。実際に普段なら彼女も切嗣を理解しようとは思わなかっただろう。だが、彼女は――否、彼女だけは見てしまった。切嗣の夢を、ほんの一部だが夢の続きを……
――この手に担う残酷が、ヒトの極みにあるならば。きっと地上の全ての涙をかき集め、拭い取ることも叶うはず――
故に、信じることにした。彼の在り方を、セシリアとの去り際に流した一筋の涙(嘆き)を。
「それに、一番重要な事を忘れていませんか?」
「重要?」
おうむ返しに答える一夏。
「覚えていませんの?私達を襲ったあの泥ですわよ」
「あ!?」
「泥が、どうかしたのか?」
ここにいる大半がその存在を失念していた。いや、気にも止めていなかった。
……無理もない。離れて見ただけでは唯の泥にしか見えない。しかし、実際に間近で感じた一夏とセシリアなら分かる。あれは唯の土くれなんがではない。もっと別の、この世に在ってはならないものだ。
この際、切嗣の人格など些末な問題だ。あれは一体何なのか?その問題点に全て終着する。
(いずれにせよ、衛宮さんは何か知っているようですし改めて訊いてみますか)



五分後、教室に真耶と千冬が入ってきた。
「みなさ〜ん、そろそろ授業が始まりますので席に着いて下さい」
沈んだ空気に、真耶の明るい声が響いた。教室の時計を見上げれば、もう短針が9に差し掛かろうとしていた。しかし、この時間になっても先程話題に挙がっていた人物は現れなかった。
「あの、山田先生。衛宮君は……?」
クラスの誰かが気になって真耶に聞いてみた。
「あ、その〜、衛宮君は……」
「あいつは今、イギリスだ」
はっきりしない真耶に代わり、千冬が切嗣の所在を告げた。
「イギリスって……どういう事だよ、千冬姉!?」
「織斑先生だ……まぁ、いい。衛宮は何らかの事情が有ったとはいえ、イギリスの代表候補生に銃を向け引き金を引いた。昨日の夜、8.00にイギリス政府に召喚された」
「う、嘘だろ……」
言外の意味するところは、切嗣とはもう会えないかもしれないということだ。
「そんな!あの泥の事は教えたのですか!?少なくとも、私はあの中から助けて頂きました!!幾らなんでも問答無用で……」
思わず語気を荒げるセシリア。イギリス政府だって、彼女を襲った物質の危険性を確認すれば多少は弁論の余地を与える筈だ。しかし、
「残念だが、あの泥はも
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ