第一章
[2]次話
十歳年上の奥さんには
職場の同僚の難波貞治が結婚すると聞いてだ、最初加藤幹夫は何も思わなかった。だが相手の年齢を聞いてそれは一変した。
「お前二十五でな」
「その人三十五なんだ」
難波は加藤に微笑んで話した、難波は穏やかな顔で黒髪は鳥の巣の様でやや面長で一七三位の背で痩せている、加藤は一八〇近い背で茶色の髪をセットしていて明るい顔立ちで何処かホストの様な感じがする。
「実はね」
「十歳上か」
「うん、婚活で知り合ってね」
難波は馴れ初めの話もした。
「そのパーティーの場で」
「それが縁でか」
「結婚するんだ」
「それはいいけれどな」
加藤は首を傾げさせて言った。
「いや、驚いたよ」
「奥さんが十歳上でかな」
「そうだよ、まさかな」
「けれどお互いに好きになって何度も会ってそれぞれのご両親も見て」
「いいってなったんだな」
「そうなんだ、奥さんもご両親もご兄弟もとてもいい人だよ」
こうもだ、難波は話した。
「それで奥さんも僕の両親と家族気に入ってくれたし」
「問題はなしか」
「一切ね」
「そうか、けれど十歳年上の奥さんか」
このことにだ、加藤は言うのだった。
「まさかだな」
「うん、初婚でお仕事は宝石店の店員さんだよ」
「宝石店か」
「それで宝石にも詳しいよ」
職業柄というのだ。
「優しくて家事も出来てね」
「よくそんな人が三十五歳まで独身だったな」
「まあ世の中色々あるからかな」
「そうか、しかし結婚するならな」
加藤はあらためて彼に言った。
「おめでとうってな」
「言ってくれるんだ」
「ああ、よかったな」
彼を素直に祝福した、そして他の同僚達と共に結婚式に呼ばれることになった。他の同僚達も歳の差婚であることを言っていた。
「まさかな」
「奥さん十歳上とかな」
「ちょっとないよな」
「まさかあいつが年上の奥さん貰うなんて」
「それも十歳も上の」
「想像もしなかったな」
加藤もこう言った、皆結婚式の場なのでしっかりした服装である。
「本当に」
「全くだ」
「けれど折角招待してもらったし」
「あいつにはいつも助けてもらってるしな」
「祝わせてもらおうな」
「今は」
「ああ、是非な」
こう言ってだった。
加藤は同僚達と共に式場の自分達の席で新郎新婦を待った、そして彼等が来たがその時にであった。
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