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ドリトル先生と山椒魚
第五幕その二
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「井伏鱒二なんだ」
「そう思うとかなりだね」
「その太宰さんがお師匠さんとしたって」
「かなりの人だよね」
「つくづく」
「その関係は長くてね」
 それでというのです。
「戦後は疎遠になったらしいけれど」
「それでもだね」
「終生続いたんだね」
「太宰さんと井伏さんの関係は」
「そうだったんだ」
「そして太宰が亡くなった時は」
 その時はというのです。
「かなりショックを受けてお葬式でも重要な役割を果たしたんだ」
「やっぱり絆あったんだね」
「お二人の間には」
「それもかなり強いものが」
「そうだったのね」
「そうだったんだ、太宰は自殺したね」
 先生は悲しいお顔で言いました。
「そうだったね」
「玉川上水だったね」
「東京の」
「女の人と心中して」
「人生を終えたんだったね」
「元々躁鬱の気が強かったみたいで」
 太宰治という人はです。
「それでだよ」
「それまでも何度か自殺しようとして」
「心中事件も起こして」
「それでだね」
「最後はね」
「心中して人生を終えたね」
「これは終生敬愛していた芥川龍之介の影響もあったかも知れないね」
 先生はこうも思いました。
「やっぱり」
「芥川さんも自殺してるし」
「何か遺書でも同じ様なことを書いていたらしいね」
「先生そんなことも言ってたわね」
「言ったよ、芥川は最後の方はかなり精神的におかしくてね」  
 先生は精神科医でもあるのでこのこともよくわかるのです。
「作品にも出ていて遂にね」
「昭和のはじめの夏の盛り」
「その暑い日にだね」
「自殺して」
「それで人生を終えたわね」
「その芥川に終生憧れていたから」 
 太宰治はというのです。
「十代の頃に芥川の自殺を知ってね」
「かなり衝撃を受けて」
「作家は最期こうあるべきだとか言って」
「感銘さえ受けていた」
「そうだったらしいね」
「芥川賞を取ろうと必死にもなったしね」
 そうしたこともあったというのです。
「そして人間失格と並行して書いていた如是我聞で」
「確か弱くなれ」
「その芥川さんみたいに」
「志賀直哉さんに言ったんだよね」
「自殺する直前に」
「最後の最後まで芥川を慕っていたんだ」
 そうだったというのです。
「そんな人でね」
「それで芥川さんみたいに自殺した」
「よっぽど芥川さんを慕っていたんだね」
「太宰さんって芥川さんの悪いこと絶対に言わなかったみたいだしね」
「太宰の心の中にはいつもあの人はいたんだ」
 先生は遠い目になって語りました。
「芥川龍之介という人がね」
「そしてその太宰さんが師事した」
「それが井伏さんだね」
「今先生が読んでいる作品を書いた」
「オオサンショウウオを書いた」
「そうだ
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