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バケモノを前にして
第二章

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「見事に打たれてきたけれどな」
「大谷さんにもだったわね」
「しかもそのホームランがな」
 二打席連続のそれがというのだ。
「有り得ないだろ」
「片手片膝ってね」
「あんな体勢で打ってな」
 そうしてというのだ。
「あんな大きなホームランが打てるんだ」
「私も思ったわよ」
 観ていてとだ、千佳はカルピスを飲みつつ答えた。
「あれはないわ」
「そうだろ」
「あんな体勢だとね」
 それこそというのだ。
「まず確実にね」
「内野フライか」
「そんなところよね」
「バットに当たってもな」
「それがね」
「ホームランなんてな」
「ないわよ」 
 こう兄に話した。
「正直観ていて驚いたわ」
「何なんだ一体」
 寿はこうまで言った。
「本当に」
「リアルな怪物とか」
「そうかもな」
 妹の言葉を否定しなかった。
「これは」
「そうよね」
「いや、凄い選手が出たな」
「出たなってこの人高卒で入団して」
「今二十八歳か」
「だから出たってね」
 それはというのだ。
「言えないわよ」
「それはそうか」
「そうよ、パリーグだとね」
 こちらのリーグではというのだ。
「昔から話題だったじゃない」
「日本ハムにいた頃からか」
「ネットでソフトバンクファンの人達がね」
「ああ、あの人に負けてな」
「優勝出来なかったでしょ」
 二〇一六年のことである。
「超巨大戦力って言われてて」
「十一ゲーム以上差をつけてな」
「七月にマジックとか言われてて」
 そこまで圧倒的な強さを見せていたがというのだ。
「それがね」
「あの人にな」
「抑えられて打たれて」
「まさにピッチャーとしてもバッターとしてもやられて」
「それで負けてね」
 そのうえでというのだ。
「優勝奪われたのよ」
「三連覇逃したんだよな」
「そうなったからね」
「ソフトバンクファンの人達はよく知ってるか」
「パリーグファンの人全体がそうで」
 そしてというのだ。
「特になのよ」
「圧倒的優勢をひっくり返されるとな、まあ阪神はな」
 ここで寿は自分が愛して止まないチームのことを話した。
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