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冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
奪還作戦 その2
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 逆を言えば、通常回線なので、情報省や警察当局による逆探知が可能でもあった。
首相は、電話に応じる姿勢を見せながら、相手の本部がどこにあるか、情報収集の時間を稼ぐことにした。

「先ほど、ご紹介いただいた件ですが、人民戦線の議長さん、会談はどちらで……」
「レバノンのベイルートで……」
 首相は静かに、男からの返事を待つ。
「では客人としておかずかりしている衛士返還についてだが……
その前に、飲んでほしい条件がある」
「はい」
「日本政府に捕らえられている社会主義を信じる革命戦士。
いわゆる、赤軍派とか革命軍といわれる活動家の100名と交換ということでどうだね。
両者の会談を行う前提条件として、これらの人物の全員の即時釈放を要求する」
 
 首領を名乗る男の声に、一斉に執務室の中が色めき立つ。
「犯罪者の釈放だって……」
「爆弾魔どもを野に解き放てと!」

 苦虫を?み潰したような表情をした総理は、しばしの沈黙の後、ゆっくりと口を開く。
「数分の猶予をいただきたい」
そういって、保留音のボタンを操作すると、静かに受話器を脇に置いた。

 憤る官房長官は、
「よくも、ぬけぬけとそんな事を」
瞋恚をあらわにし、紫煙を燻らせた後、
「このまま、テロリストと会談を持てば、日本は法治国家ではないと全世界に表明することになる」
と、心にある不安を打ち明けた。

 奥より、老人が声を上げる。
「鎧衣を呼び出せ」
(おきな)、真ですか。
あの木原という小僧の子守りをしておきながら、事件を未然に防げなかった奴をですか」
「あ奴は、カンボジア戦線で敵地奥深く侵入し、無事国外に脱出した実績の持ち主。
今度もうまくいく」

 翁と呼ばれ、閣議や次官会議に出入り御免の謎の老人。
この人物のことをお忘れの読者もいよう。
彼は、帝都城出入り御免の人物で、『影の大御所』と呼ばれる人物。
マサキをミンスクハイヴ攻略に向かわせた人物で、斑鳩の元当主でもあった。
 
 閣議に参加していた、国防政務次官の(さかき)是親(これちか)のほうを向くと、
「榊君、すまぬが人柱になってくれぬかね」
「翁がそうおっしゃるのなら……」
榊は、静かにうなづいた。

首相は、背もたれに寄りかかりながら、落ち着いた声で、賊徒の首領に返答した。
「こちらからは榊国防政務次官を特命全権大使として会談に向かわせましょう」
「ああ。分かった」
首領は、そう満足げに答えて、受話器を置いた。




 そのころ、マサキたちといえば。
彼らは御剣の許しを得たうえで、日本政府の指示を待たずに行動に走った。
武装した車で、暮夜ひそかに、ベイルートに入る。

 その夜の、マサキのいでたちといえば。
深緑の布カバーを
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