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Nalesha
Deux
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グ)』という本によると、夢とは睡眠中に潜在的な願望を充足させるためのものであると述べている。つまりわたしが心の奥底で望んでいるものや現象を、夢という形で仮実現させているということだ。学者間ではそれに賛否両論渦巻いたらしいけれど、もし信じるとするならあの、瓦礫の山がわたしの本当の願い?



心の中で失笑が漏れる。



けれど、フランス中があの町のように破壊しつくされた時の事を考えてみたけれど心は躍らなかった。



わたしが願うことは、ただ、帰りたい。



そのためにフランスを『灰色の街』にするのが必要であればするし、必要がなければしないだけ。



わたしにとっては、ただそれだけの事。



フロイトはこうも言っている。願望を明確化させるのを防げようとする意識のために夢は曖昧に湾曲されて表わされるのだ、と。



夢で見たものが、そのまますべて直接的にわたしの願望ととらえることは早計である、ということだ。



まぁ、もしわたしの見ている夢がフロイトの述べるようなものでないとするならば…。



わたしはキィと椅子を軋ませた。



目の前に座る白衣を着た男性が、返事をしないわたしに困ったように笑う。いや、この研究員はいつも困ったような笑顔でいるのだけれど。



くたびれた皮靴が、床と擦れてコツ、と音がした。



アベル・シュレッサー。



わたしの夢の中で赤子を抱きあげた男は、少し若いが目の前の男と同じ顔をしていた。



過去夢、または予知夢だなんて単純に思いこむほどわたしも子供じゃないつもり。



夢は夢現実は現実とわりきる強さをわたしはもう持っている。
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