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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第86話 アトラハシーズ星系会戦 その2 
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敵は逃げ腰だ」

 中佐の端末に映っているシミュレーションの図式を見れば、俺にもわかる。敵は砲撃を中止し、エル=トレメンドが右舷移動している横を砲撃もせず通過していく。同志撃ちを警戒して第二・第三部隊も砲撃を中止しているため、戦場は静寂に包まれている。それでもメインスクリーンに映る宙雷艇母艦が、エル=トレメンドの真横を通過しながら舷側格納庫に宙雷艇を格納しているすがたをみるのは、不気味以外のなにものでもない。

「敵の残存戦力は分かりますか?」
「一二〇〇は切っている。こちらも二〇〇〇隻を切っているから、被害レベルではほぼ同数だな」
「……無傷の一六〇〇隻を後背にするくらいなら逃げる、ということですね。撃たれたくないから、強引に急接近して来た、と」
「ここで近接戦闘しようものなら、共倒れになると分かっているようだ。こちらもまるで人質だが、これ以上死ななくていいというのなら大歓迎だがな」

 そういうと、カステル中佐は大きく溜息をついて立ち上がると、俺の痛む左肩を叩いて言った。
「ボロディン中佐。貴官、あまり女性にモテないだろ」
 俺はその問いに上官反攻罪と取られかねないくらいに唇を尖らせて、無言で敬礼して中佐の下から離れた。


 二月一七日一三五五時。ビュコック司令官は遭遇した帝国艦隊との交戦の終了を宣告した。一時間の救助と警戒索敵を指示し、その終了後、恒星アトラハシーズに向けて進路をとる。ダゴン星域へ向けての跳躍宙域に向けての直接航路ではなく、恒星スイングバイを利用して赴く航路だ。

 辛うじての、引き分けに近い勝利に沸く俺達だったが、ダゴン星域を巡る戦いはまだ半分も消化していなかったことに、気が付いていなかった。

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