暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
影の政府
三界に家無し その2
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
見ながら、大空寺財閥の総帥、大空寺(だいくうじ)真龍(まりゅう)は、
「儂の方では、戦術機の互換部品しか収めてないからのう……本体の方はちょっと」
と言葉を濁した。

 大空寺には別な考えがあった。
国際金融資本と近しい関係の彼は、親ソ容共の大伴と関係したのはあくまでも木原マサキ対策であって、大伴の考えに完全に賛成したわけではなかった。
 将軍を頂点とする(ゆが)んだ国粋主義思想には、一定の理解を示しながらも、本心としては一定の距離を持ちたかったのだ。
 電子部品をも扱うフェイアチルド社の案件に、日本企業が関われば、国際金融資本の逆鱗に触れやしないか。
 このBETA戦争も、ユダヤ商人や米国の石油財閥の援助無くせば為し得なかった部分もある。
国粋主義は結構だが、それに溺れる青年将校達は余りにも幼稚過ぎる。
現実がさっぱり見えていないのではないか。
商人としての感が、そう訴えかけたのだ。

 大空寺は各種財閥の間を縫って金儲けをしてきて、あざとい商人である。
先程の大空寺の戸惑った表情に眉をひそめる大伴を宥めようと、おだてるような事を言った。
「しかし、やるもんですな。陸士創設以来の秀才。
さすがの儂も、聞いていてあっけにとられましたわ」
大伴は紫煙を燻らせながら、頭を掻いた。
「大空寺さん、一体どうやって木原を」
「貴殿には黙って居りましたが、儂の方で、斉御司(さいおんじ)の若様を手配しております」
その言葉を聞いた大伴は、眉を開き、
「それは助かる。
さしもの木原もお武家様のご登壇(とうだん)とあらば、身動きできますまい」
「おまけに五摂家の協力もある。天才科学者、木原マサキの自滅も確実って、訳だ」
その言葉に光菱専務は慌てて、かすれた声を上げた。
「そんな大事が、もし木原の耳に入ったら……」
 専務は、木原マサキとゼオライマーの復讐を恐れた。
マサキに知れ渡ったら、国産機開発どころか、二度と朝日を(おが)めなくなるではないか。
「大丈夫ですよ。フフフ、我々を裏切らない限り、木原には漏れ伝わりますまい」
「大伴中尉。ああ……貴方は、なんて恐ろしいお方だ」
「さあ、斉御司の若様に、この後の事はお任せしようではないか」
光菱専務と入れ替わり、大空寺は大伴に近づき、酒杯を掲げる。
「よし、乗った」
商談成立を祝して、彼等は乾杯し、細かな打ち合わせに入った。

 専務は、恐ろしい企みを聞いて、不安になった。
ふと、マサキの荒々しい心を鎮めるために何ができるかを考え、
『こうなれば、娘の一つでも差し出して命乞いでもするか』と、いう結論に至った。
その足で彼は洛外にある妾の家に転がり込むと、妾とその間に出来た娘を呼び寄せた。

 専務は、娘の手を握るなり、
「お前達には申し訳ないが、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ