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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
第56話:ご協力をお願いします
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る訳ではないみたいだな」

「御理解頂けて幸いです。お話は以上ですか?」

「ああ」

「そうですか。それでは」

俺がそう言って椅子から立ち上がろうとすると,ナカジマ3佐が
鋭い視線で俺を射抜いた。

「・・・お前さん。あの事件に何か因縁でもあるのか?」

「・・・ありませんよ」

「嘘だな」

「嘘じゃありません」

「いや,嘘だ。でなければさっきのように声を荒げることもないだろうし,
 因縁を否定するのに間を必要とすることもねえ」
 
ナカジマ3佐はそう言うと,俺の顔をじっと見つめていた。
俺は,小さくため息をつくとナカジマ3佐の方を見た。

「ナカジマ3佐はシュミットという姓に聞き覚えはありませんか?」

「ん?ちょっと待てよ・・・。そういえばあの事件の少し前に,
 女房が有望な女の子が入って来たとか言ってたな・・・
 確か名前は・・・」
 
「エリーゼ・シュミット・・・じゃないですか?」

「ん?ああ!そうだ・・・って。お前,まさか・・・」

「弟です」

「・・・そうだったのか,すまん」

「いえ,過去のことですしね」

「それでも,整理しきれてねえんだろ?本当なら俺がお前さんの気持ちを
 一番理解できる立場に居るはずなんだがな・・・本当に済まなかった」
 
ナカジマ3佐はそう言うと,深く頭を下げた。

「頭を上げてください。本当にナカジマ3佐にどうこうっていう気は
 無いんです」

「そうか・・・お前さんは若いのに強いな」

「割り切ってるだけですよ。そうでもしないとやってられませんでしたから」

「それでもだよ。ま,それは置いておいてもこれからよろしくな。
 うちの娘たちは2人とも6課に預けることになるわけだしな。じゃあまたな」

ナカジマ3佐は俺の肩をポンと叩くと椅子から立ち上がって,俺に背を向けた。

「ナカジマ3佐!」

俺は思わずナカジマ3佐を呼びとめてしまった。
ナカジマ3佐は振り返って俺の目を見た。

「何だ?」

「あの・・・俺は,姉のことを遺体が発見されるか,死んだという物証が
 見つかるまで諦めるつもりはないんです。なので・・・」

「そうか・・・俺もお前さんを見習わなきゃいけねえな・・・ありがとう」

「いえ」

そうして,ナカジマ3佐と俺は別れた。


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