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チンパンジーの親
第一章

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                チンパンジーの親
 アメリカカンサス州のセジウィック郡動物園においてだ。
 チンパンジーのマハレは男の子を産んだ、だが。
「大変でしたね」
「全くだよ」 
 病院の獣医であるアーカード=モリガン髪の毛が殆どなくなっているグレーの目の大柄な白人の彼は看護師にやっとという顔で応えた。
「本当にね」
「帝王切開でしたからね」
「これは普通では駄目だと思って」
 それでというのだ。
「帝王切開にしたけれど」
「あの手術はですね」
「何度しても大変だよ」
「全くですね」
「しかしね」 
 それでもと言うのだった。
「何とかだよ」
「産まれてよかったですね」
「後はマハレは暫く安静で」
 帝王切開を受けた彼はというのだ。
「それでね」
「子供と会うことはですね」
「少し時間を空けてからだよ」
「それからですね」
「そうするよ」
 こう話して実際にだった。
 マハレは暫く安静にしてもらってだった、生まれた雄の赤ちゃんの名前はクチュザスワヒリ語で遊びを意味する名前にしてだった。
 そのうえで二日間マハレを休ませてだった。
 我が子と会わせた、すると。
「キキッ」
「キイ」 
 生まれたばかりの赤子を抱いてそのうえで泣きそうな顔になった、モリガン達はそんな母子を見て笑顔になった。
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