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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
GX編
第137話:踏み出す勇気
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士からすれば、叡智を求める事は通過点に過ぎない。得た知識は、使わなければ意味が無いのだ。
 そんな英雄どころか、研究者としても当然の帰結を口にするウェル博士であったが、キャロルから返って来たのは彼にとって予想外の一言であった。

「……何もしない」
「あぁ〜?」
「父親に託された命題と、世界を解き明かす事。それ以上も以下も無い」

 ウェル博士にとっては通過点に過ぎない事でも、キャロルにとってはそれこそが到達点。故に、事を成した後に目指す事等何もなかった。

 それを聞いてウェル博士は嘆かわしいと言いたげに背を向け口元を押さえた。

「おぉ〜ぅ、レディーに夢は無いのか? そっちのボーイはどうだい?」

 キャロルの足元に腰掛けたハンスにウェル博士が話を振るが、彼は反応を返さない。自分に話し掛けられているとすら気付いていないようにキャロルの方を黙って見ている。

 あまりの無反応さにウェル博士はこれ以上は何を言っても無駄だと溜め息を吐く。

「やれやれ、つまらない子供達だ。英雄とは飽くなき夢を見、誰かに夢を見せる者ッ! 託された物なんかで満足してたら、底も天辺もたかが知れるッ!」

 テンションが上がり過ぎたからか、ウェル博士は好き放題に口走る。
 それがある少年の逆鱗に触れたとも知れずに。

「『なんか』? 今『なんか』と言ったか?」
「あ?」

 今まで口を閉ざしていたハンスが突然言葉を紡いだことにウェル博士が振り返ると、そこには自分に怒りの目を向けているキャロルとハンスの姿があった。

「イザークさんが……キャロルに託したものを……キャロルがその為にどれだけの心血を注いできたかを知らない奴が……!?」
「ハッ! だったら何だって言うんですか? 折角の知識も、活用しなければ意味が無いッ! 大体その程度で満足するような様じゃ、その命題とやらも解き明かせるのか疑わしいものだッ!」

 ウェル博士は理解していない。今自分の目の前に居るのがただの少年少女ではなく、世界に喧嘩を売れるほどの危険な人物である事を。

 最初ウェル博士の物言いに怒りを感じていたハンスも、怒りが一周回って表情から感情が抜け落ちた様子で見ている。

「キャロル……もういいな?」
「あぁ……」
「え?」
〈L・I・O・N、ライオーン!〉

 ハンスはビーストに変身すると、ダイスサーベルを構えウェル博士を刺し殺そうとした。突き出された切っ先を、ウェル博士は悲鳴を上げて転がる様にして回避する。

「わひぃぃぃっ!?」
「英雄……と宣う割には、随分と情けない悲鳴を上げるものだな」

 無様に逃げ惑うウェル博士をキャロルとハンスが見下す。ハンスはその後も、まるで甚振る様にウェル博士を追い回しついに柵へと追い詰めた。
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